Kan-Kan の雑記帳


2002年7月30日

 夏が好きなので、あまり気にならないのですが、今年の暑さは、暑がりの人にはかなりこたえている様子。嫁ハンがしんどそうなのは夏バテと思い込んでいたのです。ところが、念の為と連れて行った病院で、「鉄分欠乏性貧血症」と診断されました。当分、注射に通う事になったのですが、食事で補充できる鉄分って知れているのですね。一応、泥縄とは思いつつ、焼き鳥のレバーなど買ってきたところです。

☆映画ダイスキ

「ショコラ」
 ジュリエット・ビノシュ、ジュディ・ヂンチがオスカー候補に挙がった佳作。見たかった作品でした。フランスの片田舎の小さな町に流れて来た母娘が、因習に満ち、保守的、排他的な人々の心を手作りショコラ(チョコレート)で溶かしてゆく。ファンタジーだけど、決して甘いつくりでなく、カメラも丁寧で沈んだ色調。薄桃色の街が美しい。ジプシー役でジョニー・デップがいい味を出しています。


☆最近読んだ本

「猛スピードで母は」
 本を図書館に返してしまって、作者名を失念しました。長嶋ナントカさん。昨年後期の芥川賞受賞作です。初めに息子が読んで、嫁ハン、私と回ってきました。2人の感想は「あっさりしている、すぐ読める、なんやこれ」。それで、期待しないで読んだのですが、これが文章がウマイ!高校生の私を育てつつ、がむしゃらにかつ奔放に生きる若い母が、力の抜けた過不足の無い文章で的確に描かれています。いじめなどもあるのですが、読後感は爽やか。

2002年7月29日

 厳しい暑さが続きますが、そこは正確な時節の流れ。着実に日は短くなり、朝夕の風の揺らぎに、かすかな秋を感じます。

 「今朝の秋」という山田太一さんのドラマがありました。信州の山小屋に住む老父は、壮年の息子の末期ガンの知らせに、山を降りて酷暑の都心の病院に向かいます。人生の理不尽を嘆く息子。人は皆死ぬ、ジタバタするなと、父。苦笑する息子。それぞれの人間の中に潜む死も匂わせてドラマは淡々と進みます。そして、父は息子を病院から連れ出します。ラストシーン、だれもいない高原の山小屋の朝。風がカーテンを揺らし、部屋の片隅の机の上の息子の遺影がちらっと見えます。実際に死期の近かった老父役の笠智衆の演技(と言えない演技)が絶品でした。

☆大阪ええとこ

「うぐいすの湯」 富田林に出来て、評判は聞いていたのですが、やっと行けました。外環状線、富田林駅へ折れる交差点を反対方向、PL本庁、美原へ向かう坂の中腹。「一心太助」の隣です。土日は一杯のようですが、平日だったのでゆったり。打たせ湯、サウナ、ジャクジーの定番はもちろん、漢方のなんとか石を通した湯とか、合計10種あまりのいろんな湯を楽しめる仕組みですが、ポイントは外の露天風呂の階段を上がる構造。お年寄りや足の悪い人にはきつい。雨の日は滑るかも。でも、最上部の海水温泉(なんでここで海水?せっかく掘り当てたのなら本来の湯でよいと思う)からの見晴らしは上々。600円は妥当なところと思います。

☆不思議空間

「本郷菊富士ホテル」 休日の夜の気楽さに流されて、衛星テレビでつい午前4時まで見てしまいました。評判になった東京芸術座の舞台中継の録画。主演はもちろん看板女優の森光子。東京本郷にある文人達に愛されたホテル(「山の上ホテル」をイメージ?)を舞台に、大正から昭和20年代までの庶民の哀歓を綴る。あちこちのよくできたドラマ(たとえば「ステラダラス」)のいくつかを巧妙につなぎ合わせたような構成とちょっとオーバーな演技、演出でたっぷり笑わせて、泣かせる。それぞれ演技どころを得た(なんといっても大杉栄、竹久夢二、谷崎潤一郎なども登場するのですから)役者たちががんばるが、やはり圧巻は森光子。もう80歳に近いはずなのに、20代から始まって50代まで、歌って踊って、泣いて、泣かせて、緩急自在の演技。昔はあざといとも思ったけど、今はもうご立派としかいいようがない。土佐出身の、貧しいが、明るく大酒飲みで気風のいい女給という、おいしい役をのびのび演じてました。大健闘は流石の大畑淳子。口から粥を飛ばして、森光子と罵り合うシーンの迫力で客席を沸かします。そんな中で、金や体裁や見栄や集団や建前が優先された(今も)社会、そして東京という場所そのものも揶揄している部分もあって・・・。深みには欠けるけどおもしろい舞台でした。

2002年7月15日

 7月の座禅は7日早朝に。晴れて気持ちいい。寺の前庭に馬酔木が揺れている。静寂の中で座っていると、ある時間に一斉に蝉が鳴き出す。鳥の声もなにもかも消えてしまう。薄く目を開けているので、畳の目の上を朝日のかげが動いて行くのが見える。一匹の蚊に悩まされる。昔、ある禅僧は裸で体に酒を塗って座ったというが、とんでもない。(もったいないー笑)

映画ダイスキ

「アメリカン・ビューティ」

 昨年のアカデミー作品賞。これは緻密な構成で練り上げられた佳作。アメリアの豊かな地方都市の豊かな中流家庭。その底に潜む人間のエゴや性的欲望をリアルに描き出す。題名は主人公の奥さん(アネット・ペニング・・・美しい)が丹精する真紅のバラの名前。これは同時に主人公の若い女性(高校生の娘の同級生)への欲望を表わしています。主人公(ケビン・スペイシー・・・うまい!)が自分の欲望を少しずつ解放したことから、すべてのバランスが崩れ、悲劇が起こります。死んだ主人公のナレーションから始まる構成はあの名作「サンセット大通り」を意識しているのでしょう。あの主人公の欲望はストレート(美女であり、金、成功)だった。今のアメリカの中年ははるかに屈折、ゆがんでしまったそれをどうコントロールしてゆけばいいのか・・。問い掛けは重く。見たあとの気分は少々重いものがあります。

2002年7月14日

 電車通勤って面白い。駅の改札で毎朝、決まって大きな声で挨拶している若い駅員さん。何秒に一回と決められているのか、テープのように正確な反復です。ほとんどの人はだまって通り過ぎてゆく。改札を抜けながら、こちらも「おはようございます!」と返すと一瞬絶句してしまう。とっさにトーンを落として、個人的挨拶を交わすというマニュアルはないらしい。メンバーが一巡して、相手も慣れてきたら・・・と返事を楽しみにしている昨今です。

映画ダイスキ

「グラディエーター」

 2年前のアカデミー作品賞。古代ローマを舞台にした、堂々たる大作です。キャスト、スタッフ、技術も一流。それなのにもひとつ胸に迫ってこない。どうしても、「ベン・ハー」や「スパルタカス」と比べてしまいます。なにが足らないか。弱者や虐げられたものに対する暖かい視点ではないでしょうか。それが作品の風格の乏しさに繋がっている様に感じました。皇帝の信任厚い武将が、新皇帝に疎まれ、妻子を殺され、奴隷にされ、見世物の闘剣士として戦いつつ、ローマを目指し・・・。売り出しのスター、ラッセル・クローをヒーローに、復讐譚をエンタテイメントに仕立て上げて、ヒットを狙った魂胆がミエミエです。ラッセル・クローもセクシーが売り物だそうですが、古代ローマの武将としてのカリスマ性は感じられません。

2002年7月13日  その2

近畿あちこち

和泉リサイクル環境公園

 友人に薦められ、7月6日、風の強い日に行ってきました。河内長野から170号線を車で10分余り、大野町北交差点を右折して数分。エコロジカルファームという謳い文句の、花の農場がメイン。スポーツ施設もあります。中心に3万株というラベンダー畑が青空と和泉山脈を背に広がります。その香りのすばらしいこと。風が強くてもかなり感じましたから、風の無い日はどんなでしょう。癒されます。花は盛りを少し過ぎていましたが、薄紫のじゅうたんは富良野でないと見られないと思い込んでいましたから、思いがけない感動でした。入場無料。

2002年7月13日  その1

 2週間前、夕顔の棚を作っていて、バランスを崩し、門柱の上に落下、今も右胸に痣と痛みが。情けない。皆様も日曜大工や庭仕事には十分ご注意を。

行く人来る人

 しばらくこのコーナーをサボっている間に、たくさんの人が逝ってしまいました。

村田英雄さん・・・「王将」の大ヒットをリアルタイムで知っているわけで。町中どこでもこの曲が流れていました。個人的には「人生劇場」や「無法松の一生」のほうが好きです。歌手としては興味なかったなあ。


近藤和彦さん・・・あの「てんびん打法」は印象強烈でした。今のイチローのように、みんな真似をしたものです。66歳は若い。

ナンシー関さん・・・消しゴム版画にはそれほど興味が持てませんでしたが、辛口のテレビ批評は楽しみでした。こちらは39歳。驚きました。

ローズマリー・クルーニーさん・・・素敵な歌手でした。「ハッシュバイ・スイート・シャルロット」が好きでした。甥のジョージが今やハリウッドの大スターです。

ロッド・スタイガーさん・・・「夜の大捜査線」で人種的偏見に満ちた南部の警察署長を演じて、アカデミー主演男優賞を受賞。あのような役を演じられるのは、リベラリストだったからこそでしょう。



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