Kan-Kan の雑記帳


2002年8月31日

 上本町にある国際交流センターに、「第8回斉平展」を見に行きました。知人がかんでいる会派の書道展ですが、最近の書道展にない開かれた明朗さ、パワーを感じました。個展でない場合は、よく主催者の主義、趣味、傾向に統一された作品展が多いのはもちろんですが、この斉平篆会はリーダーの個性か、みんな自由にのびのびとユニークな試みをしている。オーソドックスな書や篆刻から、陶版、花器、そして置物や時計など工芸に近いものまで・・・。つくづくいいなあと思いました。個性伸張などといいながら、それを殺すことばかりしているどこかの国のえらいさんにみせてやりたかったです。

☆映画ダイスキ

「陰陽師」

 期待しないで、偶然テレビでみてしまいました。これが思いのほか面白い。夢枕獏さんの原作はよく出来ているのですが、うまく映像化しています。平安時代の京のムードをCGを使って懸命に出そうとしていて、それが効果を上げている。でも、脚本がご都合主義でせっかくの小泉今日子がもったいない。盛り上がりには欠けましたが、見てよかった。

「ウォーターボーイ」

 これは期待して見ました。それを裏切られない青春映画です。実際の埼玉県川越高校の男子のシンクロナイズドスイミング部をモデルにしているのですが、撮影に備えての実際の練習もすごかったのでしょう。出演者の熱気が画面から伝わる力演の数々。個々の生徒や、私生活がも少し詳しく描かれたら、秀作になるところです。演出も少し滑るとこはあったけど、最後のプールシーンに見事に収斂していて、しっかり見せる。日本映画、がんばってます。

2002年8月29日

 今夜の夕顔は三輪。よく似ている花に「朝鮮朝顔」があります。名前と逆に、こちらも夕刻に開くのですが、やや大きく、白百合にも似ています。香りもよく、好きな花です。最近よく見かけますが、実は食べると、幻覚、意識混濁をもたらし、古代インドでは暗殺に用いられたとか。同時にそれを利用して、麻酔手術にも使われ、あの華岡青洲が乳がん手術の麻酔薬に用いたそうです。今日の朝日の夕刊からでした。

☆最近読んだ本

「スリリングな女たち」  森川みどり

 「サスペンス映画への招待」という副題があります。「情婦」「白いドレスの女」「ダイヤルMを廻せ」「ナイアガラ」・・・作品選択は面白いのですが、内容が薄い。映画のストーリーの紹介に追われて、女性論、女優論になっていません。

「物語り」   中村吉右衛門

 いい声、美しい口跡、テレビの鬼平役で売れましたが、当代一の弁慶役者でしょう。その聞き書き。これは面白かった。最近多い勘九郎の芸談より深い。これは歌舞伎に対する距離感にあるのかもしれません。どっぷりつかっているのと、客観性をたもっているのと・・・。どちらがいいともいえませんが、このキャリア、実力でこのクールな姿勢は貴重と思います。

 幼い頃から名優の祖父、初代吉右衛門の養子になり、プレシャーを受けつつ精進してゆく。それでも、ジャズにはまり、絵画をたしなみ、スポーツカーに凝る。その上で歌舞伎に対する知識、造詣、技術を深めてゆく。江戸時代の歌舞伎役者が河原者とさげすまれ、その反発で、教養と表現力をつけてゆくなどという分析も興味深い。市松模様が18世紀の役者、佐野川市松の袴の模様から来ていることをはじめて知りました。(市松人形のもとがあったのですね)

2002年8月28日

 暑さもぶり返していますが、一雨ごとに、台風が来るごとに、秋がひたひた寄せて来ている気配がします。それにしても、ぴたっと蝉が鳴きやみましたね。心配していた夕顔も、毎夕十輪あまり見事に咲いて、大満足。もうしばらく楽しませてくれそうです。

 パンパシフィック水泳、日本代表でがんばっている奥村幸大クン、山本貴司クンはかつて富田林イトマンスイミングで、隣の選手育成コースで泳いでいた少年たち。こちらはおじさんグループで、わいわい騒いでいたのに。もー立派になって・・・見ているとジンと来ます。

 ヤクルトの藤井投手は四国の高校の後輩。もちろん面識はありませんが、ガッツある投球にこちらもつい応援してしまいます。

☆故郷四国

 8月10日、早朝、今回は明石ルートを外して、山陽道を走って高松に向かう。これが誤算。盆帰省のくちきりで、高速は大渋滞。5時間近くかかって、瀬戸大橋にたどり着く。都会と大きな島を背景としたダイナミックな明石大橋と異なり、スマートで、広々とした海原を小さな島を繋いで真っ直ぐ伸びる白い連続橋はまた味わいあり。しかし高速を乗り継いでの料金が高い。やはり大阪から高松を目指すなら、明石ルートが正解です。

 高松市内の息子の下宿にたどり着き、早速二人で昼食のうどん屋探し。ガイドブックをたよりに迷いつつ30分、発見した郊外のうどんの店に飛び込む。どんぶりが3種類あり、1玉から3玉まで選んだサイズのどんぶりに入れてもらって、支払い。1玉なんと190円。(2玉270円)自分で湯掻いて、ダシも選んで・・・腰のある麺のおいしさ。サイコー。思わずおかわりしてしまう。でも、息子に言わせると、これくらいならもっとおいしい店があるよ。うーむ、讃岐うどんは奥が深い。

2002年8月25日

もっと京都

 初秋の京都。今回は三条の京都文化博物館の知人の書道展に。四条からすまから東洞院通りを上る。途中の「セカンドハウス」でパスタを食べる。ここの2階から見る目の前の御射山公園の桜はきれいだろうと思う。

 三条通りの手前まで来て、右手のビルの2階の「鮟鱇屈」(窟ではない)という面白そうな字が目に付く。書道関係の店らしい。例の好奇心で、階段を上がり覗き込む。店は閉まっていた(中は雑然)けど、前でうろうろしていたら、ドアが開き、70過ぎの主人らしき人が出てきた。

 店名の由来などあれこれ訊いていたら、店内に招き入れられる。結局座り込んで、30分余りしゃべることになる。興味のある話がいろいろ聞けて興味深かった。ここで全てご報告できないのが残念。鮟鱇屈というのは250年ほど前に名づけられた(店はそれ以前からあった)御所出入りの店の名前でした。明治の東京への遷都にあえてついてゆかず、一般相手の店に変わったらしい。そのご老人自身、水野さんとおっしゃる、篆刻の世界では有名な方と後で知りました。近々店を閉め、移転されるとか。今回お会いできてよかった。やはり京都は奥が深い。

 本来の目的の書道展はイマイチで、書かれていた酒の歌だけメモして会場を後にする。宇治の姉の家に寄り、地蔵盆を覗いて、その後伏見の料亭で義兄にご馳走になる。さすが酒処、吟醸酒がめちゃおいしかった。酩酊して9時過ぎに大阪の自宅に帰る。京都は案外近いと感じた(酔って眠っている間に着いたからー笑)今回の京都行きでした。

2002年8月24日

大阪ええとこうまいとこ

千早赤阪村  「山灯花」

 噂には聴いていましたが、やっと行くことができました。富田林、河内長野それぞれから車で20分余り、結構、山に分け入って、道も細くなり、こりゃおもしろいなと思った頃、杉木立の中に瀟洒な建物が見えてきます。3万坪といわれる敷地は一山以上になるので起伏も多く、広さの実感が湧きませんが、レストラン棟のほかにアートギャラリーやファッションギャラリー、養魚場(マス)があり、それらが遊歩道で繋がっている。

 8月初めに訪れたのですが、山百合、睡蓮などが咲いていました。特に、大きな木に纏わりついて咲いているのうぜん葛は、住宅地に咲いているのに比べてダイナミックです。食事は予約制で、山里料理(抹茶付き)で4000円。お代わり自由の茶粥がおいしい。レストランから望める山の中腹にある、白い蔵つきのオーナーの邸宅らしい一軒家の庭先に、5メートルくらいの滝がしつらえてあるのが見える。お金がかかったやろうなあ。時間を気にしないでゆっくり山の気に浸りたい時にいいでしょうね。

2002年8月22日

最近読んだ本

字幕の中に人生  戸田奈津子

 字幕スーパー担当(映画翻訳者というらしい)の第1人者のエッセイ。確かにむつかしい仕事だと思う。正確に訳するには、一秒3〜4文字、縦10文字、横13文字というのは少なすぎる。意訳で内容が正確に伝わり、しかも映画鑑賞の邪魔にならない・・・英語力というより、社会や人生に対する知識、そして国語力が問われるというのがわかります。

マイブーム

 海外旅行は定年後の楽しみと思っているけれど、それもあてにならないし・・・というわけで、「ユネスコ世界遺産」のビデオシリーズを市立図書館で借りてきてじっくり見ることにしました。1箇所15分くらいで見られて気楽な居間での見学ツアーです。第1回はフランス編。

1. フォンテンブロー宮殿 増築を重ねすぎて、全体のバランスが取れなくなったというのはわかる。でも、スケールの大きなこと。庭と池の美しさ。
2. モン・サン・ミシェル ノルマンディー半島の付け根の湾の小島を覆って、天に向かい立つ美しい修道院。ここへは是非行きたい。
3. シャルトル大聖堂 パリ郊外の小さな町、田園風景の中に聳え立つゴシック建築の大聖堂。ステンドグラスが美しい!

2002年8月21日

 台風が来て、去った後、土用波が立ち、海にクラゲが増え、朝夕の気温が下がり、つくつく法師が啼き終わり、甲子園大会(四国勢の活躍で故郷は特に熱かった)に決着が付き、これではっきり秋が来ると感じられますね。

 四国の実家では盛りを過ぎていたのに、大阪の我が家ではやっと夕顔が咲き出しました。それでも、花の輪が小さく、咲くのも控えめ、なぜかなと思っていたのですが、どうやら明るい街灯が原因ではと思い至りました。今更動かすこともならず、明るい灯の下の花と香りを楽しんでいます。四国では、薄暗い夕闇の中でドキッとするほど白い色が清潔に、かつなまめかしく感じられたものですが・・・。

最近読んだ本

涙堂  宇江佐真理

 今人気の時代劇作家、函館在住で江戸を舞台に人情がらみのいい作品を残してきました。近年、常に直木賞候補に挙がりながらもう少しで逃してきた。ちょっと書きすぎなのかな。この作品も発想、構成はおもしろいのだけれど、イマイチ半端な仕上がりです。侍の妻で屋敷住まいであった身から、夫の不慮の死を契機に下町の長屋に住まいを移した初老の主人公が体験する市井の出来事と、夫の死をめぐる謎解きがうまく噛み合って回らない。歯がゆい思いで読み終えました。

ありがとうございません  檀ふみ

 女優だけれど、文章のうまさには定評あり。父(檀一男)譲りというより、お嬢さんでありつつ、したたかな芸能界で鍛えられた点が微妙なバランスとなって、ユーモアたっぷり、笑わせてくれる。自虐的な点は大阪的でもあります。

人物柱ごよみ  戸板康二

 文藝春秋に連載された文を中心に。そうだったのかとおもうような点も多い。名優宇野重吉さんが鈴木三重吉のファンでそこから芸名を取っていたなんて・・・。

一生青春  中村鴈治郎

 平凡な題で損をしていると思うのですが、相田みつをの言葉から採ったそうです。人間国宝にいたる芸能生活の長い精進の道。特に発声法、セリフ回しへのこだわりと訓練はすごい。近松門左衛門のみにこだわり、あとは周りに合わせて流されてきたという生き方もおもしろい。

 先月に舞妓さんとの仲がフォーカスされましたが、これもこの本に原因あり。はっきり「遊んでいるのでスクープに来い」と書いてある。それでも揺るがず、2005年には念願の坂田藤十郎を襲名します。

 それにして装丁は美しいのに、落丁が多い(演劇出版社)。ざっと読んで5箇所も気づいたのは問題です。

朗読者  ベルンハルト・シュリンク

 高松の息子Bの下宿に置いてあったのでもらってくる。息子はイマイチと申しておりました。ドイツで大ベストセラーになって、映画化とは聞いていたのですが・・。うまく作っています。年齢差(20歳)のある恋、ナチスドイツの傷跡、文盲という3つのテーマが見事に同時進行してゆく。でも、日本人にはナチスドイツへの協力問題や戦犯裁判の経過がもひとつリアルに迫ってこないかもしれません。また、テーマを欲張って、主柱がどれかあいまいなのがズシンと胸に来ない原因かもしれません。でも、力作。田舎の長い夜、一夜で読みぬきました。

2002年8月9日

 夏の夜、プロ野球がペナントレース終了の気配なので(近鉄ガンバレ)、特集番組を見る。イギリス制作の番組ですが、NHKが放映した「海ー青き大自然」(8回シリーズ)は酔わせてくれました。日と手間のかかった撮影、水中からの波、月、そして魚影、泳ぐ魚、イルカ、シャチ、鯨の美しさ。いながらにして、世界の海が見られる、なんてすごい時代に生まれ合わせたのだろうと思いました。

☆最近読んだ本

 年に何度か、田辺聖子さん、曽野綾子さんのエッセイを読みます。自分が狭い視野に嵌まり込んでいないか、偏っていないか、おふたりのそれぞれにシャープで他におもねない、穿った意見は蒙を啓かせてくれます。個人的には田辺さんの文が好きですが、曽野さんの、異論はあるけど、一本筋を通す意見も拝聴しなければと思うのです。

 昨夜読んだ田辺さんの分の一節、「エゴをわきまえ、コトバを武器として、ようく使い込む、それがオトナというものである気がする」に深く共感しました。

 一方夏は気楽でかつおどろおどろしい世界も捨てがたい・・・この夏は赤江ばくさんの「霧ホテル」と「虚空のランチ」を読む。どれも同じく通俗の世界はひとつもない。固有名詞も凝りまくる。短編集で、中にははっきり未完成、中途半端なものもあるが、それも赤絵ワールドならではとファンは許してしまう。

「芸夢感覚」  フランキー堺

 すぐれたリズム感と表現力に恵まれた人材が、戦後という個性が放たれた時代に、目一杯開花する・・・も少し遅くても、早くてもだめだったと思う、いや、それなりに違う仕事をしただろうが。1週間でドラマーとしてプロになり自分のバンドを持って活躍する、また、役者として「幕末太陽伝記」、そして伝説のテレビドラマ「私は貝になりたい」(私は再放送を見た)で頂点も極める。一方、大阪芸大教授として、28年間まっとうする。いつも120パーセントで生きてる・・・これは生前書かれたものですが、長生きはできないだろうなと思わせる。その底には川島雄三はじめすごい才能達とのふれあい、そのすざまじい生き方の投影があるのでしょう。

2002年8月8日

 夕顔の蔓が延びて、いよいよ蕾も用意され、近日中に咲きそうです。帰省中に咲いてしまうのではと心配。それにしても、夕顔の水揚げのよいことには驚かされます。一日3度くらい水を遣っても、根元がすぐ乾いてきます。

 嫁ハンの貧血も、毎日の通院注射の甲斐あって、血液中鉄分量が回復。入院せずに済むことになりました。ただし、今年の夏の帰省は諦めて、家でおとなしくすることに。私一人で帰省するのはちょっとさびしいけれど、留守中の夕顔の水遣りをしてもらえるので、その点もほっとしています。

 友人から福島県喜多方の酒「蔵粋」(くらしっく)というのをもらいました。もろみの時からモーツアルトを聴いて育った酒だそうで、「ピアノ協奏曲第21番」を聴きながら飲んだらいいそうなのですが(笑)、その曲がうちにないので、CDを借りてくるまで、当分寝かすことにしました。どんな味なのでしょう。

2002年8月6日

 57年前の8月6日の朝も、よく晴れた夏空で、祖母は裏のミカン山で草を削っていたそうです。はるか上空をたった一機のB29(後にエノラゲイと知る)が北へ向かって行ったのは見えたそうです。ミカン畑からは海が見え、その向こうに広島の山が見える。ピカッとした光が見えたけど、そのときはなんのことかわらなかったそうです。その日のうちに新型爆弾投下の噂はひろがり、さらに翌日から、船で、信じられないほどの症状の被爆者が次々運ばれてきて・・・。

 23年間に亡くなった祖母からよく聞いた話です。愛媛の実家から広島市までは海上数十キロ、高速艇で1時間あまりの距離なのです。

 毎年この日にさだまさしが長崎でコンサートを行う。たしか17回目。その意識と継続の力に感服します。「精霊流し」を聞いて、テニスに出かけましたが、あのあと「風に立つライオン」は唄ったのでしょうか?

2002年8月4日

 今月の座禅はせみ時雨の中で。盛夏ですが、境内にはさるすべりが咲き始め、畳の上の日差しも7月よりはこころなしか柔らかい。いつもは速く過ぎて欲しいと思う座禅の時間も、なんだかいとおしい、もったいない感じがして、ゆっくり楽しもうと思いました。そういう時に限って、時間はあっという間に過ぎる。皮肉なものです。

 奈良ではつくつく法師が啼いたそうです。比良ではコスモスが咲いているとか。

 冒険家の白石康次郎さん。単独世界一周ヨットレースに挑戦。35歳になって、いい顔になってきました。今は亡き植村直己さんのような澄んだ目をしてはる。自分には出来ないけど、無謀だとも、生活は、家族はどうするのかとも思うけれど、冒険せずにはいられない気持ちはわかるように思います。今、大洋に漕ぎ出すことは出来ないけど、日常を離れて、自分の限界を試したいという想いは50歳を過ぎても残っているものです。

2002年8月3日

 坂東玉三郎さんもやっと夏休みに入り、今、避暑に行って海水浴をしているとのこと(スキューバダイビングに凝ってはるらしい)。考えてみれば10ヶ月、舞台に出ずっぱりだったんですね。スゴイ体力だ。7月の舞踏公演(銀座テアトロで「雪」、「鐘の岬」、「楊貴妃」を踊る)を終えての感想(彼のhp)で、「鐘の岬」で荻江節の立唄を唄った荻江寿友さん(随分、高齢のはず)が、3日目に「もう3日経ちましたね」と名残惜しそうに言われたとのこと。一日、一日を大事にする姿勢に打たれたと書いてはります。その言葉に学ぶ玉三郎もエライ。

 年は僕と一緒ですが、あの細い体であの体力、以前テレビで見ましたが、近代的なトレーニングを取り入れて、上半身には筋肉はつけず(和服が着られない)下半身をしっかり鍛えているとのこと。確かに、かつて、あの重い衣装で中村歌右衛門も腰を痛めて、療養生活に入ったのでした。

 きちんと夏休みをとって、秋からの公演に備える姿勢も立派と思います。

2002年8月1日

 暑さも今日が峠とか。子どもの頃は1年が長かったけれど、今は季節が矢のように過ぎてゆきます。もうちょっとゆっくりしていってよと思うのですが、「歳月は人を待たず」。昔学んだ言葉が、心にすんなり入ってくるのも少し寂しい。

☆最近読んだ本

ヘミングウエイ短編集

 ニックという作者の分身のような少年の成長過程をエピソードで連ねる作品群に、スペイン戦線での生々しい体験スケッチが挿入される凝った造り。デリケートで傷つきやすい少年がどう変わっていったか・・・。ただ乗りした貨物列車から、車掌に殴り落とされ、とぼとぼ歩いていて焚き火に出会う。親切に火に当たらせてくれた顔のゆがんだ中年男性は、ボクシングのもとチャンピオンだった。その男が急にキレて襲いかかって来る・・・。後に猟銃で自殺する作者自身の心の屈折も、かすかに見えるように思います。

☆最近の発見

 白い象ー突然変異でたまに生まれる。ホワイトタイガー(白虎)がもてはやされるように、インドではやはり貴重なものとされたらしい。ただ、養育に莫大な費用が掛かるため、マハラジャは気に入らない家臣に与えて、困らせたという。それで「白象」は「貴重だが持て余す物」という意味があるんですって。ナルホド。



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