Kan-Kan の雑記帳


2003年2月24日

最近読んだ本

「海辺のカフカ」村上春樹

 息子に借りて、話題のベストセラーを読む。東京の15歳の家出少年が夜行バスで高松を目指す。そのあと少年の父の不可解な死が起こり、それは戦争中に山梨の山中で起こった小学生の集団催眠事件とリンクしてゆく。一方、少年は高松で不思議な私設図書館と、そこの人々にめぐり合い・・・。

 前半がめちゃ面白く一気に読ませる。作者独特の冴えた文体でぐいぐい引っ張ってゆきます。ただし後半広げすぎた謎とドラマの展開を収斂してゆくのに無理がでました。着地にミスって減点(感動が薄れた)になったのが惜しい。「Xファイル」や「リンク」や大江健三郎の『四国の森』のイメージをうまく取り入れすぎているきらいも。でも相変わらず人物造型も魅力的。村上ワールドは健在です。ただし彼の代表作にはならないでしょう。

映画ダイスキ

「情婦」

 好きな映画のベスト10には必ず入る。23日、12チャンネルで久々の放映。堪能しました。原作と映画の幸せな融合。アガサ・クリスティーの原作(「検察側の証人」-題名にすでに伏線が張られている)も優れて面白いのですが、映画は(舞台も)さらにひとひねり。マレーネ・デートリッヒという稀有な女優の資質と個性を見事に生かしたビリー・ワールダー監督の冴えた腕。ちゃんと当時、世界一といわれた脚線美も見せてくれます。

 老嬢の殺人容疑を掛けられた夫の無罪を証明できるのは正式には結婚していない妻(情婦)だけなのですが・・。チャースル・ロートン、タイロン・パワー(美男子だがちょっと老けすぎ)という名優の共演も楽しませてくれる。この春舞台で麻美れいさんがこの役を演じました。見たかったなあ。


中国への旅 24

 2000年を迎える北京は楽山や成都と違って厳戒体制。やはり首都です。当時話題になっていた宗教問題もあるらしい。花火、爆竹も市内は禁止。時差の関係でホテルのテレビで紅白歌合戦を見た後、12時までにまだ1時間あまりあるので、甥を誘って完全防備して市内探検に繰り出す。

 通りは暗く、人も少ないけれど、デパートは12時まで開いているというので人が一杯。デパート内のスケートリンクで滑りたかったが、ここで怪我してはと思い我慢。市の中心部は比較的静か。政府関係の建物の前には、極寒の中、立ち続ける若い兵士たち。賑わいは放送局の移転と共に市の郊外に移ったらしい(東京の「お台場」みたいに)。

 1時過ぎにホテルに帰り、テレビで中国版「ゆく年くる年」を延々と見る。中国各地の迎春の模様を中継しているのですが、どこもすごいお祭り騒ぎ。花火プラス大群衆による踊り(それも女装している)が多い。最後はモスクワ放送の新年番組で締めくくる。

2003年2月23日

 氷川きよしさんはバレンタインデーにチョコが1万枚届いたとか。さすが演歌の貴公子。新曲の「白雲の城」はなつかしい三橋美智也さんの「古城」のイメージですね。さて、演歌の王道を歩み続けられますかどうか、このあたりが正念場。でもこの歌、ちょっと時代からずれているようにも思うけどなあ。却ってそれが新鮮と踏んだ戦略なのでしょうか・・・。

 地下鉄の事故は隣国の話ではありませんね。人災の面もありますが、地下街の治安や地震津波などへの防災対策を含め、便利な都会が抱えているリスクにももっと目をむけなければ。そして、そのような事故のとき、老人、子どもや障害のある方はどうなるのか・・・考えると薄ら寒いものがあります。

 まんさくの花が咲き始めたというニュース。「まずさく」から「まんさく」というのだそうです。いいネーミングだなあ。

中国への旅 23

 年末の楽山の市街はお祭り騒ぎ。本来は春節(旧正月)を祝う国なのに、やはり最近は西暦でも祝うようです。大渡河沿いの道路わきにはいわゆるカラオケ喫茶がずらりと並んでいる。どの店もバスのような造りで、店の奥に向かって通路の両側に席が並び、奥の正面に大きな画面がある。どの店も大音響。暗い街灯の舗道では爆竹が鳴り響く。12月30日の夜空には定期的に打ち上げ花火が。驚いたことに夜中の12時過ぎまで上がっている。日本なら安眠妨害で大問題でしょう。

 翌朝早く、ホテルの窓の下を人のざわめきが通り過ぎる。かなり長い時間。起き上がってカーテンを開けると、薄暗い歩道を、若い人の団体がきちんと4列縦隊で行進してゆく。あとで訊いてみると市民マラソンに参加する市内の体育大学の学生達が寮から会場に移動していたのでした。それにしても、私語はしつつ、隊列を崩さないのはすごいことかも。

 朝食を終えても、街は霧の中。川岸から見えない事故現場に合掌し、霧の高速道路を飛ばして成都空港へ。菜の花咲く暖かい四川省から零下5度の北京まで3時間。大晦日の夕べでした。 

2003年2月22日

 先日述べた通勤途中の店屋さんの件。ずっとシャッターが下りていたので心配していたのですが、先日その近所で姿をお見かけして、思い切って声を掛ける。話したのは初めて。「店閉めてはるけど、どうしはったんですか?」向こうもびっくりした様子で、「実は胆石で入院するのです。しばらく休ませてもらいます。」とのこと。お大事にと言って別れる。事情がわかって安心しました。また、元気な姿が見られますように。

 「道明寺天満宮」の梅は7分咲き。人も一杯。門前の「梅廼家」の昼は予約も出来ません。でもお奨めは隣の「道明寺」の庫裏の紅梅白梅。敷き詰められた白砂、枝振りのよい松の傍を過ぎて、小さな門の中にひっそりと咲いている。これは見事ですよ。

 東京のO君。心配しています。このHPを見られたら連絡してください。 

2003年2月15日

 マスクをしている人を見ると、風邪?インフルエンザ?と訊いてきましたが、それとも花粉症?と訊く季節になったようです。そして、授業が終わり、考査問題が出来た今、ほっと一息ついて、ついでに風邪をひいてしまう、そんな時期です。金曜日、ぞくぞくするなあと思っていたら、風邪気味の悪友から風邪もらってくれと抱きしめられ、熱い息を吹きかけられて最悪。うがいをたっぷりしたけれど心配。

 こうなれば思い切った措置をと、バレンタインパーティで大騒ぎ。藤井寺のスナックで、酒は少し控えめに、いつもはあまり歌わないカラオケを歌いまくり踊りまくり汗をかく。最後にニンニクをたっぷり入れたラーメンで仕上げをしてぐっすり眠ったら、翌朝は気分爽快。ただし、前夜、パーティ途中で寝てしまい途中でソファから転がり落ちた友人(85キロ)を抱き起こした時に、腰を痛めた模様。世の中うまく行きへん。

中国への旅 22

 1999年12月末、四川省楽山市郊外の「橋じ店小学校」、セレモニーが終わったあと、眼目の図書室に案内してもらう。「藤本怜子文庫」という看板が掛かっている校舎の一室。鍵が掛けられて、電球はひとつ。暗く寒い。壁の一面を埋めた書物はあまり読んだ気配が無い。きいてみると、きちんと管理しようとするあまり、希望者はいちいち先生に申し出て、部屋を開けてもらい、一冊ずつ手渡してもらうとのこと。ちょっとがっかり。姉がもっと自由に出入りして、手にとって読めるようにしてほしいと要望する。図書はある意味では消耗品、補充も考えるからと。本棚も低くして、低学年向けの絵本などもいれてほしいと同時に要望。校長先生は了解(でも、この要望はあまり生かされていなかったことが2年後の再訪でわかることになる)。

 保護者の方から落花生を一袋お土産にいただく。来たときの緊張感も解け、今度はなごやかに手を振って帰途につく。砂埃のむこうに坂の上の小学校がかすんでゆく。また来ることもあるだろうかと思う。なだらかだがでこぼこの山道を一気に下る。道端で、来る途中に見かけた豚が丸焼きにされている。柳の下ではまだ麻雀が続いていました。 

2003年2月8日

南九州では春一番が吹いたとか。寒い冬と言われつつも、日一日と日が長くなって、春の足音を感じます。それにしてもアメリカは本気で戦争を仕掛ける気のようですね(イラクもとことんはぐらかすみたいだし)。戦いの足音はいただけません。その勢いを止める手立てはないものでしょうか。

7日夜、上本町で友人達と第9回「餃子の会」。会の規則はひとつー餃子と酒以外はダメというだけ。今回は、参加者21名と過去最高。3時間、飲みつつ、餃子を10人前単位で注文をし続け、カンバンまでに107人前(最後の7人前というのが微妙)。これは新記録(前回は15人で75人前)。これで一人2500円は安い。意気揚々と引き上げたしだいです。でも、今朝は家族から臭いと顰蹙を買い、午後、テニスでビールを流し、匂いを消したつもりですが、5人前を平らげた匂いはなかなか抜けません。

アトス・・・ギリシア正教の聖地、まさか生きている間に見られるとは思わなかった。「NHKスペシャル」で8日放映。カメラが入ったのももちろん初めてらしい。美しいエーゲ海を見下ろす半島の断崖の上や中腹の修道院で、厳しい修行を送る2000人の修道士たち。夕方6時に一日が始まり、午前4時に起きて、朝の祈り3時間、平均睡眠時間四時間とか。家族も財産もすべて捨てて信仰に生きるーこのような人生もあるのだなあと思うけれど、この世は空しいと、たとえば16歳くらいで思いきれるのだろうか・・・。厳しい自然の中で、さらに一人で修行する人も。日本の出家遁世より厳しい宗教の在り方。1000年の歴史とイスラムとの戦いや帝政ロシアの崩壊などで、侵略と奪略にも始終さらされ、修道士は銃を持って自衛しているというのもすごい。

2003年2月5日

 2日、息子と市民図書館へ行った帰りに、道明寺天満宮へ廻る。少し肌寒いけど3部咲き。紅梅、白梅それぞれに木によって枝ぶりも、咲き具合もさまざま。人間も同じなんだろう。「思いのまま」という白梅の有名な種類の表示を見て、息子が「これは育てやすいと言う意味から付けているのかなあ」。あ、そんな見方もあるんだ。個人的な思いのロマンチックな命名と思っていました。

 3日、先日この欄で述べた茶屋町の画廊の、(前回は新年会)今度は彫刻展のオープニングパーティに出かける。パートナーは例によって彫刻家の友人H。

 二つ並んだ展示(川上隆史さんと山川れいこさん)の、川上さんは画廊中央に横たわる、一見、潜水具のような、振り子のような、マスカラのような造型が目玉。その他、細長いボトルが並び、中に黒い液体が微妙な量感で入っているものなど。おもしろい。テーマは「時間」と見ました。

 山川さんは、きれいな曲線のブルーのアクリルの造型の中に、黒や白の煙のような流れが溶かし込まれている。磨く作業を思うと、気が遠くなる。二人でワイン1本差し入れただけで、たっぷりお酒をいただく。山川さんが米造りから参加された「きらく」というお酒が秀逸。これから「オープニングパーティ荒らし」になりそうな予感。

 帰りはもちろん天王寺の裏通りのいつもの店。常連の楽しい人たちと盛り上がる。冬の夜はにぎやかにやらなくちゃ。

映画ダイスキ

「至福の時」

 期待のチャン・イーモウ監督の新作を見に「梅田ガーデンシネマ」に駆けつける。がっかり。これがあの世界の巨匠の作品か・・・。盲目の少女を支える、善意の、しかし世間からずれた人々・・・これって、チャップリンの「街の灯」や「ライムライト」、フランク・キャプラや日本映画の下町人情ものの焼き直しじゃないか。しかも、展望も救いも批判もない。

 喜劇仕立てなのに、映画が終わって出てくる人々の表情が暗かったこと。お薦めできません。 



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