Kan-Kan の雑記帳


2005年3月31日

 先日、「淡路の春」の項の「花ざしき」と書いたのは「花さじき」のマチガイでした。ご指摘いただきました。ありがとうございます。確かに「さじき」(桟敷ー見物席)の言葉にふさわしい眺めでした。今頃は更に美しいことでしょう。

 やっと桜が咲きそうです。今朝から半日の間に、枝先の蕾が何輪か開きました。

 春が来るのは嬉しいけれど、別れの季節でもあります。今日も何人かの親しかった方とお別れしました。また会いましょうねと言い合いながら、なかなか会えないのが世の常。それを破って、会いたい人に会う努力を常にしなければと思います。

 ストーブや灯油のCFともお別れ。特に出光灯油の「ウルトラマンのお買い物編」が好きでした。菅野美穂さんに「だめねえ」とやさしく言われたら、うれしく落ち込むだろうなあ。

 テレビ番組も次々終了。唯一見ていたドラマ「京都地検の女」もあっさりおしまい。名取裕子さんの啖呵が気持ちよかったです。本筋より脇筋や演技を見てしまうドラマでしたが、また始まることを期待しています。

 名古屋グランパスの安選手。北朝鮮サッカーチームの一員としてW杯予選でプレーしながら、あの騒ぎの中にいて冷静でしかも前向き。本日、名古屋に帰ってきてのインタビューで「サッカーの難しさと楽しさを改めて知った」ときちんと対応している。若いのにエライなあ。


最近読んだ本

「ジャスミン」辻原登

 辻原さんの作品は芥川賞の「村の名前」以来です。「ピースホテル」の写真のジャケットからして凝っている。1989年から始まる物語は、神戸、上海という魅力的な港町、いや大都会(特に魔都、上海―自由劇場の「上海バンスキング」や映画「上海特急」が懐かしい)を舞台に、戦後まもなく大陸に消えた父を探す主人公「あき(字が出ません)彦」の前に現れた美しい女性「李杏」、二人の恋を縦糸に、戦中戦後の中国と日本の裏面史を描きつつ、天安門事件、1995年の阪神淡路大震災と大事件も題材に取り入れドラマチックな展開を見せます。

 辻原さんの文体はちょっと気取ってうまくて素敵なのだけれど、馴染むのに私は時間がかかります。それと主人公が裕福でかっこよすぎるのもイマイチ。大震災さえ、仕組まれた天災のように思えて、悲惨さは伝わってきません。

 しかし、神戸や上海は実に魅力的に描かれています。冒険小説として一読の価値は十分。
 ジャスミンティーが小道具としてうまく使われています。また、神戸へ行きたくなりました。

2005年3月30日

 嵐山光三郎さんのエッセイから・・・・定年になっても色気があるのは不良定年組で、優良定年組はしょんぼりとして元気がない。(中略)気にくわないやつとは口をきかなくてよい。若い者は手練手管ではぐらかし、子はちょろまかし、昼間から酒を飲み、道楽ざんまい、二律背反を是として、冗談を言って生きてきゃいいのだ。とぼけて、風狂でいき、後悔せず、家出して、淋しさを食って生きろ。
 定年を迎えると、血縁者より友人が頼りになる。家庭は非戦闘地域ではありませんよ。定年後、家庭に逃げ込もうとする油断からおやじの不幸が待っている。
 「これまで妻子のために全力ではたらいてきた」と信じているおやじが倒れれば、妻子は「今まで好き勝手にやってきた報いがやってきたのだ。お気の毒だけど自業自得です」と突き放すものなのです。

 不良定年組に早くなりたい!色気だけは大事にしたいと思っています。


行くひと

 多田智満子(歌人 2003年1月死去)

  緑濃き この遊星に 生まれきて などひたすらに 遊ばざらめや
  癌告知は 受胎告知にて ありしかな わが「子の宮」に癌を祀りて

 石垣りん(12月26日 心不全 84歳 2月さよならの会)

  詩以外に彼女の残した言葉で印象に残ったもの

  「夢や希望を持ったことはないの。興味だけで生きてきたわ。本当よ。」

 皆川睦雄さん(元南海ホークス投手 敗血症 69歳)

 1954年に入団。2年間目が出ず、解雇を覚悟したら、当時の監督、鶴岡一人さんが「お前は一生懸命練習しとる」と給料が倍になった。その翌年11勝。69年に31勝、通算221勝。

 ユニス・シュライバーさん(スペシャルオリンピック創始者83歳)

 ジョン・F・ケネディの妹。シュワルツェネッガーカリフォルニア州知事の義母。名門ケネディ家の秘密、お姉さんのローズマリーさんが知的障害を持っていたことを1962年に公開してから、彼女の戦いは始まった。反発を受けつつ、その財力、人脈をフルに活かした活動は見事でした。


淡路の春

 「ウエスティンホテル淡路」はその敷地の広さ、付属施設の充実度は立派なものです。W杯でベッカムが泊まってさらに名を知られました。でも、外観はイマイチ好きになれません。たしか安藤忠雄さんの設計と聞きましたが、これだけ海と空、そして緑の自然に恵まれている環境に、打ちっぱなしのコンクリートや石垣は似合いません。ホテル横の「百段苑」はまるで花の巨大墓地のようです。

 でも、感動したのは「奇跡の星の植物館」。「サファイアかずら」などの花もきれいでしたが、見せ方がうまい。これは今まで見た中で最高の温室です。

 隣の「国営明石海峡公園」は広くてきれい。でも、ここも人が少ない。3連休なのに・・・みんなお墓参りに行っているのかな。

 ホテルの内装は見事でした。ウエスティンは室内とベッドには定評があるそうですが、さすがです。特に浴室とトイレを分離し、浴室に洗い場と、洗いようの足の高い椅子を置いてあるのに感心。楽です。さっそく真似しようと思っています。

 車で20分ほど、山に入り尾根を北に走ると「花ざしき」。入場無料なのに、これが拾いもの。広くて見晴らしよくて、菜の花が満開。目の下の大阪湾がこんなにきれいな海と知りませんでした。はるかに霞む葛城、金剛を縦走中の友人と携帯で交信、春うららです。北に明石大橋、西に瀬戸内海、休憩所で明石焼きとそばめしを食べて、地酒をお土産にして、早めに花の淡路島を後にしました。貪らず、また行きたいと思っています。 

2005年3月29日

裸の球児たち

 金曜の夜10時35分のフェリーに乗りました。満員。理由は甲子園帰りの団体。九州のチームがこの日敗れて、選手、応援団が別府まで帰るのだと見ました。試合後の興奮が船に満ちている。同日、愛媛のチームも敗れたのですが、こちらはバスで橋を渡って帰ったらしい。
 大浴場で選手達と出くわす。みんながっしりした体つきで坊主頭、顔は日に焼け、体は真っ白。野球選手はすぐにわかります。気になったのはレギュラーらしい上級生にひとりずつ下級生が附き、洗い場で洗っている先輩の後ろに素裸で立っている。先輩が頭を洗うとすぐにシャワーを掛け、タオルで背中を流す。手馴れた動作で毎日合宿所で行われている風景とみました。
 浴槽に浸かって来たレギュラー陣は今日の試合を振り返ってあれこれ言っている。あのときこうすれば、あのボールが、あのバッティングがこうであったら・・・いつものちょっかいは控えて、じっと耳を傾けていました。内心「たらは北海道!」とつっこみを入れましたが・・・。その間に下級生は急いで体を洗っています。
 上がったら新しいグループが脱衣場にいて、上級生が下級生に芸をさせている。うーむ。

 まるで軍隊みたいやなあ、と帰省した実家で父に話すと、まだ、そんなん残っているんやなあと苦笑いしていました。大学の体育系のクラブなどにもその風潮はまだまだ残っているのでしょう。人間の本性や組織のあり方はそんなに変わらないものなのでしょうか。

 湯上りにビールを買いに売店に行くと、レジが混んでいる。たくさんビールとあてを買い込んだ男性教師らしき二人が精算してもらっている。○○高校で領収書お願いしますという声。これから船室で宴会なのでしょう。もちろん大阪府(大阪市はモチロン!)では考えられません。行事中の酒は厳禁です(ちょっぴり苦しいけれどー苦笑)。30年ほど時代が遡ったような感慨を覚えました。それれにしてもあのお金の出所は?

 私の母校もたまに甲子園に出ますが、ものすごい費用が掛かるようです。もちろん寄付依頼がきっちり廻って来ますが、何度かに一度は、「国体に出場したボート部へ寄付します」などと逆らってみる、へそ曲がりな先輩です。


第36回 日展

 今年は彫刻が見せました。創作のエレルギーが館内に満ちている。友人の彫刻家、播間公次さんが入選したこともあるのだけれど、力作が目立つように感じました。播間さんもそうですが、すっくと立った若い女性像が多く、また光や未来を志向した題名が多いのも驚きでした。

 洋画も充実。名前はよう憶えないけれど、毎年出してはる人が結構いて、その中でもパターンを守る人―たとえば、同じ室内に同じモデルを使っている・・・その女性の衣装が楽しみーテーマを次々変えて新しいことに挑戦する人ー今年の作品「生生」は仔牛が生まれた牛小屋の向こうに広大な森林と星空が広がっている・・・ちょっと気張りすぎやなあ。毎年祇園の女性をテーマにしている人は、今年は蒼い孔雀と組み合わせて新鮮。そして、また逢えたと思った作品に黒いリボンがあったりして、年に一度の出会いにもいろいろあります。毎年圧倒される日本画はイマイチでした。

 早足で歩きながら、思わず足が止まる作品をじっくり見るのが私の見方。いくつか印象に残った作品の絵葉書を買って帰るのですが、百分の一くらいのサイズになると、まったく別のものになってしまいます。来年から絵葉書買うのは止めよう。でも、日展にはいつも元気をもらいます。市立美術館で21日まででした。

2005年3月21日

 春の日差しの一日。急に涙とくしゃみと鼻水が出始めました。これが噂に聞いた花粉症?花見の季節を前に怒り戸惑っています。花粉というより、連休を利用した部屋の模様替えで被った埃が原因ではないでしょうか?医者にゆくほどでもないし、とりあえず早く寝ることにしましょう。

 センバツに出場の慶応高校は45年ぶりの甲子園。上田監督(47歳)のテーマは「エンジョイ・べースボール」。「初球から行け」「ミスを続けるな」などのチームの25か条の項目の最後は「監督の言うことを信用するな」だとか。どんな戦いをするか、楽しみです。

 美しいステンドグラスを造る末友章子さんの個展に文の里の画廊「円津喜屋」(えんづきやー円は旧字)に行ってきました。戦災に遭わなかった、懐かしい昭和初期の下町の食堂の雰囲気を残す画廊と、現代的な末友さんの作風がミスマッチでしたが、面白い味がありました。

 文の里近辺はちょっと寂れたいい雰囲気の町。おいしい焼酎の店「佳秀亭(かしゅうてい)」も発見しました。田舎育ちなので、町中や路地に憧れがあり、大好きです。市内探訪の楽しみは奥深いものがありますね。


映画ダイスキ

「レイ」

 連休の最後のお楽しみはもちろん映画。フェスティバルゲートの映画館に滑り込んで(ここは予告編がないので時間に余裕なし)やっと見ました。

 昨年亡くなった有名音楽家を描いていますが、単なる伝記映画には終わっていません。もちろん単なる音楽映画にも。

 でも、やはりすばらしいのはレイの音楽。「わが心のジョージア」、「愛さずにはいられない」・・・代表曲が的確に効果的に再現されます。そしてそれを再現しえた演技陣のすばらしさ。超有名人でしかも音楽家、そして目が不自由という何重にも立ちふさがる演技上の障害をジェレミー・フォックスが見事にクリアーし、演奏し、演じます。「エビエーター」は未見ですが、オスカー受賞は当然かもしれません。入神の演技です。ゴールデン・グローブ賞でも、アカデミー賞でも亡き祖母への思いを口にして涙ぐんでいましたが、レイと自身の俳優への道とがクロスし、共感するところも大であったのでしょう。

 病弱な身で洗濯女として働きながら、誇りを失うなと厳しく育ててくれた母への思い、幼い弟の溺死を救えなかったことのトラウマ、アフリカ系であることの、目が不自由であることのハンディ、音楽にのめり込み、幸せな家庭を望みながら、それを手にしながら、一方、クスリ、女にも溺れて行く・・・。

 以前の伝記映画のように美化してひたすら音楽的感動を誘うのではなく、ひとりの人間としての欠点や苦悩も描いているのが立派です。存命中から脚本に意見を入れていたという故レイ・チャールズ自身の見識が立派といえます。

 映画としては、彼の音楽性を高める為の厳しい訓練とか、差別に目覚め、戦ってゆく過程をもっと詳しく描いてくれていたら更に感動は深まっただろうと思うのですが、それは私がレイを深く知らない外国人だからで、きっとアメリカ映画として、作る側も観客もみんなそんなことは知っていて、その上でこの映画を作り、見ていたのだろうと思います。ちょうど美空ひばりを映画化するようなものですものね。

 その点を鑑みても、美化することを極力避けたレイ・チャールズと製作者はえらい。その分、更にキャスト、スタッフの思いは高まり、アフリカ系アメリカ人の誇りと痛みが伝わってくる熱い映画に仕上がっています。 

2005年3月19日

 今月の夫婦のホテルツアーはウエスティンホテル淡路(1泊食事なし、ダブルで1,3000円ーひとり6,500円)。神戸市内を抜けると海が明るくなる。明石大橋を渡っていつもサービスエリアに寄っていましたが、今回はその隣の「ハイウェイオアシス」にもまわる。欧風の建物の裏に広い庭園があったのです。梅の花の間に、トサミズキが黄色い花をつけて鮮やかでした。

 出会いーホテルのフロントに「ジャズピアニスト野瀬栄進(のせえいしん)さんのライブが9時からメインバーであリます、無料」と小さな掲示があるのを発見。「無料もの」ダイスキな我々は俄然その気になりました。

 夕刻満席のレストランで食事をしていると、3テーブルほど隣に黒いセーターにブレザーの若い男性がいる。あれ、今夜のピアニストとちゃう?と嫁ハンに問う。なんでわかるの?演奏の前にこんなとこでのんびりしていないわよ。でも、そんな匂いがしないか?などと言いつつ午後9時前に「チェンテリーノ」へ。シックな雰囲気のメインバー。部屋の半分を占める大きな円形のカウンターはスツールが2つずつ間隔を1メートルほどあけてセットしてある贅沢な造り。ソファと併せると5,60人は入れそう。我々は中央のグランドピアノの後ろ側のソファに座る。

 9時10分。現れたピアニストはやはりあの人でした。嫁ハンは驚いていたけど私は納得。よくあることで、なぜかこんな嗅覚だけはあるのです。全然、実生活には役に立たないけれど・・・(笑)。

 週末で満席、そのせいか客の聴くマナーが悪い。たいした宣伝もせず、入り口に表示もしていないので仕方ないけれど、単なるBGMと思っているらしい。大声で話して耳障りなことおびただしい。特に隣席になった大阪から来たらしい某学校の教師らしい3名は、生徒がどうの、さすまたがどうのとうるさいこと。水かけてやろうかと思いました。後で演奏合間のトークから、野瀬さんは11年振りにニューヨークから帰国したばかりで、20日に神戸でライブがあるとのこと。当夜はその試弾を兼ねての忍びの演奏の様子と推察。それで無料なんでしょう。

 前半は野瀬さんも押さえ気味でしたが、休憩を挟み、うるさい客が引いて、空席の目立つようになった11時過ぎにやっと調子が乗ってくる。演奏中にウェイターが小さなメモを見せ、演奏しながら(!)読んでウェイターとしゃべって曲を変化させている。アドリブでリクエストに応えているらしい。さっそく我々もやってもみようぜと、嫁ハンは「アメージンググレース」を私は「私のお気に入り」をメモしてウェイターに渡す。ちょっと首を傾げて苦笑いをしていたけれど、きっちり2曲とも取り入れてくれました。。35歳と若いけれど、丁寧な演奏で好感が持てました。これから日本で活躍されることでしょう。水割り2杯で贅沢な思いをさせてもらった宵でした。

 今回の淡路の報告はまた項を改めてさせていただきます。春の花が美しい島でした。


最近の言葉から

「あるものを見た人は見なかった前に戻ることはできません。見たことも無い人にそのものを見せることはできません。・・・歴史をひもとかない人によい明日はありません」

岸恵子さん

 当たり前のことだけれど、岸さんが言うと説得力あり。国際的視野を身につけ、アフリカや中東の情勢厳しい地域を選んで訪ねる行動力に感服します。文章もうまい。

2005年3月17日

 「パイレーツ・オブ・マラッカ」などと言っても19世紀の話ではなかったのですね。近年増え続けていたのです。ロケット砲まで持っていたというのが恐ろしい。平和ボケしてばかりではいられません。

 アメリカで兄弟喧嘩で4歳の兄が2歳の弟を射殺。拳銃は母親のハンドバッグに常にあったとか。唖然とします。

 別次元の話ですが、日本でも有人ロケット、宇宙衛星の計画が本格化するとか。金はかかっても、こういうところで文明の、科学の進化の力を見せてほしいものです。


 先週亡くなった先輩の話。仕事も遊びも出来る人でした。もちろん酒も。そして、いつも一番酔った人を最後に家まで送ってくれるので「保護者」と呼ばれていました。ただ、飲んだ後で甘いものに誘われるのだけは恐怖でした。「ミスタードーナツ」でたくさん注文して、無理やり食べさせられる。黒帯なので、押さえつけられると私でも身動きできません。今でもフレンチクルーラーを見ると胸が悪くなる・・・そんな思い出話を同窓会のようになった葬式の後、昔の同僚と泣き笑いしながら語り合ったことでした。


最近印象に残った言葉

 実像はその人が生まれつきもっていたものに過ぎないが、虚像のほうは、その人の才能と努力と運の結晶と言えないであろうか。その人が創作者ならば、作品である。実を超えうるのは、虚しかない。偉大な虚のみが、現実を越えて生き続けることができるのである。

 これも確か塩野七生さんの文章だったと思います。「偉大な嘘」をつくには大変な才能、努力、運がいることなんですね。


ビデオでがまん

「ビッグ・フィッシュ」

 ティム・バートン監督の昨年度の快作。ホラ話をし続ける気のいい男、みんなから愛されて老境を迎えるが、ひとり息子との間にだけはこころが通い合わない。息子はロマンチストの父親の話を聞きすぎて、その反作用で現実主義者になっていたのです。

 父親の重病の知らせに身重の妻と共に故郷に帰った息子は、父親の死の床で昔の話を思い出し、また周囲への見聞から荒唐無稽の話のいくつかが事実であり、その上で事実を越えた真実の在り方、生きることの意味に気づいて行きます。最後に息子が父に語ってやる作り話(父は大きな魚になって・・・)まで、ファンタジーなのに無理のないきちんとはまった脚本が見事です。

 演技陣がすばらしい。老いた父親を演じるイギリスのおしゃれな名優アルバート・フィニー、妻にオスカー女優ジェシカ・ラング、父の若き日をのびのびと演じるユアン・マクレガー(アルバート・フィニーの跡を継ぐとされるイギリス若手演技派にしてプレーボーイ、「スターウォーズ」よりはるかに生き生きしている。このキャスティングもいい)短い出番ですが印象的な役割で、ヘレン・ボナム・カーターがすごいメイクの「沼地の魔女」から、落ちぶれた名門老令嬢まで演じているのも見ものです。

 そしてカメラもいい。回想シーンのテクニカラーのような画面の美しさ。広場一面の水仙の場面は、この映画のハイライトです。

 哀しく明るい葬送シーン。大作ではないけれど、心にジーンとではなくジワッとくる佳作です。ティム・バートン、いい!


行く人

桂文枝さん(落語家、肺がん、74歳)

 「華麗の文枝」と言われた関西落語界の逸材でした。三枝、きん枝、文珍を始め優れた弟子達を育てた師としての力量も。なにより「はんなり」とした芸は味がありました。

2005年3月14日

 牡丹雪の激しく舞う13日、奈良三輪山の麓に葬儀に出かけました。友人というより最初の職場の尊敬する先輩が亡くなりました。膀胱がん、61歳。若すぎます。

 仕事が正確で速く、いつも先の見通しを立てておられました。指示し、教えてくれるのでなく、自分の後姿で後輩をひっぱってゆくタイプの人でした。その仕事振りを拝見して、多くのことを学びました。職員ソフト大会ではキャッチャーで4番、マラソンはもちろんトライアスロンまでこなし、テニスの大会に出場し、50代を越えてからは奥様と山歩きを楽しみ、俳画もたしなむ多才な人。健康、頑健を絵に書いたような人がなぜ?やせ細った亡骸に接して涙が止まりませんでした。

2005年3月10日

 朝の愛聴番組、「のぶりんのハッピーモーニング」の人気コーナー、「鈴木杏樹のいってらっしゃい」から読者の投稿。卒業式の思い出。

 高校の卒業式を控えて娘が父親を呼びたいという。理由はお父さんは約束を破ったから・・・。仕事で忙しい父親は、娘の小学校の卒業式には仕事を休んで出席すると約束したらしい。ところが卒業式前に両親が離婚。娘は母親に引き取られ、卒業式に父親は来なかった。それから6年。娘の懇願に折れて、母親はしぶしぶ元夫に連絡を取り、久々の涙の対面になったそうです。
 後日談があり、その再会のとき、父親は既に病気に冒されており、数ヵ月後に亡くなったという。

 娘に対面を急がせたのは神の配剤でしょうか。最後に娘の卒業式に出ることが出来て、父親は幸せだったと思います。

 さまざまな思いを胸に、明日、卒業式です。

 「のぶりん・・・」も3月末で終了。原田信郎さんは前任の菊水丸さんに比べて、欲がないというか、聴いてくださいというアピール度に欠けたかもしれません。休暇もきっちり取っていました。でも、そののんびりぺースが好きだった人もいたはず。ちょっぴり寂しい思いをしています。

2005年3月6日

ビデオでガマン

「ミスティク・リバー」

 前々から見たいと思っていましたが、重そうなので心身の準備が出来ていませんでした。週末やっと見ました。個々の人物の陰影を丁寧に描いて、練り上げられた脚本。少年期の悲痛な体験が数十年後、幼馴染の3人の男の人生を引き裂いて行く。アカデミー主演、助演の演技賞を受賞したショーン・ペン、ティム・ロビンスの演技はもちろん、もうひとりのケビン・ベーコンや、マーシャ・ゲイ・ハーデンの、夫を信じられなくなってゆく妻の演技も見事です。

 でも、なにより俳優達の名演を引き出したクリント・イーストウッド監督の腕を評価すべきでしょう。すぐれたスポーツチームのような、出演者たちの熱意とやる気が伝わってくる映画です。おまけに彼は音楽まで手がけているのです。事件も家族の苦悩も悔いも知らぬげに、今年も賑やかにパレードは流れて行く。そして「二つの死体」を飲み込んで、今日も川は流れて行く・・・印象的なラストシーンにうなります。

 それにしても1昨年にこの作品、昨年は「ミリオンダラー・ベイビー」。質の高い仕事を続けるイーストウッド、75歳、立派。

「オ−シャンズ11」

 「12」を見る前に見逃した「11」をまず見ておかねば。昔のフランク・シナトラ一家の「オーシャンと11人の仲間」の焼き直しですが、こちらもジョージ・クルーニーを中心とする仲良しグループが楽しんで作っている感じが魅力です。イケメンのジョージとブラッド・ピットを軸にスターが勢ぞろい、ラスベガスの地下金庫から大金を盗み出すという犯罪ゲームがテンポよく進むのですが、映像のテンポが物語りのテンポに追いつかない恨みも。

 それに、美男子軍団に花を添えるジュリア・ロバーツが珍しくキレイキレイ役をやっているのですが、こういう扱いをされると却って魅力的に見えないというのが彼女の面白いところです

 これで準備完了。さらに豪華キャストになった「12」がビデオになったら見ようと思っています。


今日印象に残った言葉

 「協調性と社交性とは、似ているようで方向が反対である。ひとつの文化の中に溶け込もうとするのが協調性なら、違った文化とうまくつきあうのが社交性。内に閉じるか、外に拡がるか。」 森毅

 なるほど。文化論ですが、日本外交にもあてはまる言葉ですね。

2005年3月4日

 友人の音楽教師、山本良之さんのピアノ演奏会に八尾プリズムホールへ行きました。2年前にお手伝いしたミニコンサートから夢をぐんと拡げて、長年の憧れ「ブラームスのピアノ協奏曲2番」に挑戦。「長い恐怖」とピアニスト達から畏れ、仰がれる名曲。毎日4〜5時間練習したこともあるとか。仕事しながら、それを貫いたのが立派。モーニングも新調。ここ数日はプレッシャーに悩まされたようですが、こんな豪華なで贅沢なプレシッャーはめったにないよ、楽しまにゃ、と無責任に励ます私。

 プリズム小ホールはほぼ満席。

 ブラームスがこんなにロマンチックでドラマチックでパワフルなものとは知りませんでした。最初に小さなミスタッチがあったようですが、それで却ってリラックス、ぐいぐい乗ってきて、渾身の力を込めて弾く・・・だんだん頬が紅潮してくる・・・音に力が籠もる、「力み」もまたいい。音楽に没頭する姿に感動。元気をもらいました。

 あえて前座を務めた山本さんの親友のプロピアニスト、金子浩三さんのリストも軽やかですばらしい演奏でした。

 万雷の拍手、娘さんから花束を貰い、これも親友の指揮者、遠藤浩史さんと抱き合い・・・山本さんにとって忘れられない宵になったことでしょう。寒い冬の夜でしたが、熱い演奏に観客は興奮して、声高に感想を語り合いながら夜の街に散って行きました。


最近印象に残った言葉

 「アメリカの大学生は、日本の学生と違って、自分の大学と別の大学院に進むものが多い・・・途中で専門分野を変える人も、多いような気がする。自分に合ったものを探し、うろつくというのとはちょっと違う。それなりに打ち込んで、直接にはそれまでのキャリアが役に立たぬ別の分野に進んで行く。しかし長期的にはそうした経験が生きている。」ー森毅ー

 好奇心とチャレンジと幅広い生き方ということですね。小さくまとまらないというのは難しいことです。 

 

2005年3月2日

 築40年になる我が陋屋は、あちこちがたが来ていますが、なんとか持っているのは人が住んでいるからだそうです。なるほど、田舎の村の空き家はあっという間に朽ちて行きます。温暖な愛媛でそうですから、厳しい風土の地ではなおさらでしょう。

 新潟中越地震の被災地は、今、雪の中。ただでさえ地震で傷んでいて、おまけに人が住んでいない、中が暖かくない家は、屋根の雪の積もりも更に深く、その重みで倒壊してゆくケースも多いようです。気の毒の限り。

 それにしても、40年の我が家より、築100年を越す故郷の実家の建物の方がはるかにしゃんとしているのは悔しい。気候?地盤?立地?素材?技術?手入れ?・・・そのすべてのような気がします。


ビデオでガマン

「エリン・ブロコビッチ」

 面白い作品でした。なにをやってもうまくゆず、夫に捨てられ、子供を抱えたケバイ女性が、弁護士事務所に勤めて公害問題を担当し、それにのめり込む打ち、初めて人に尊敬されることの喜び、生きがいに目覚めてゆく・・・ジュリア・ローバーツ、当たり役。名演。うまく行き過ぎと思うけれど実在の人物、事件がモデルなので説得力あり。社会性を持った作品をうまく娯楽作品に仕上げた監督の腕も立派です。

「ラブ・アクチュアリー」

 イギリスのウェルメイドのロマンチックコメディ。独身のハンサムな首相(ヒュー・グランド、適役)と官邸の小間使い、新婚夫婦(新妻は美しいキーラ・ナイトリー)と夫の親友、ポルノ俳優同士、作家と避暑地の家政婦など、たくさんの登場人物達がそれぞれクリスマスに向けていろいろあって、最後にヒースロー空港でクロスするというよく出来た作り。イギリス演劇界のスター達の達者な演技が楽しめました。



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