Kan-Kan の雑記帳



2009年6月30日
 
 「 かたつむり 甲斐も信濃も 雨の中 」  飯田 龍太
 
 近景から遠景へ。果てしない広がりをもった句。もちろん、かたつむりの世界に国境はありません。ゆっくり信濃へ超えてゆきます。
 
 朝の通勤電車、座れて本を読んでいると、目の前の女子高生がちょっと屈んでカバンを持ち上げる、その瞬間、長袖の手首がめくれて、リストカットの跡が見えました。制服(市内の私立女子校らしい)はきちんと着ているが、スカートにシミがいくつか。降りるときに見たら、白い顔に、ピンクの眼鏡。ちょっと気になりました。
 
最近気になる人
 
 鎌田 浩毅さん (京大 環境学研究科 教授)
 
 1997年に京大に来て、研究発表のような授業をしていたら評判が悪い。白衣を着て、ぼさぼさ頭の先生が英語の専門用語混じりの講義を90分をしても学生の理解と忍耐力を超えてしまう。2001年から、授業を変える。ファッショナブルな格好と15分刻みの授業で人気に。
 
 ちょっとマスコミに出過ぎのようですが、格好はともかく、15分刻みというのは、私の授業とおなじ方法なのでほーッと思いました。でも、高校生と京大生は違うように思うけどなあ。
 
 
最近読んだ本
 
「 ローマ人の物語 30 終わりの始まり (中) 」 塩野 七生
 
 五賢帝時代が終わりを告げる。五代も賢帝が続いたのは、最適の人材を皇帝が養子に迎えるというシステムが四代も続いたからだ。息子は選べないが、後継者は選べる。そして、幸運なことに?四代続いて皇帝に息子がいなかったからだ。
 
 しかし、五代目のマルクス・アウレリウスには実の息子がいた。それも哲学を愛し、民衆の尊敬を受け、病弱なのに前線でがんばった賢帝の息子とは思えない、格闘競技好きで政治に無関心のアホ息子だった。
 
 それでも、内乱を怖れたマルクスは息子コモドゥスを後継者に指名する。将軍たちも先帝との約束を守って(これがすごい)、コモドゥスの放蕩を見逃してやるい。しかしやりたい放題の11年後、コモドゥスが暗殺されると、いよいよ将軍達は腰を上げ、帝国は本格的な内乱に突入してゆく・・・。
 
 うーむ。最後までドラマチック。この部分は映画「ローマ帝国の滅亡」(古い!)「グラディエイター」で描かれた部分ですね。
2009年6月28日
 
 エルトン・ジョンの歌う主題歌に合わせて、主演賞候補の少年達が軽やかに舞う、ミュージカル「リトル・ダンサー」のパフォーマンスで、トニー賞授賞式(NHK衛星で中継録画放映)の幕が開きました。スターは消え、スターは生まれ、新しい伝統が作られてゆきます。
 
 先日、書き残したマイケル・ジャクソンの話をふたつ。
 
 享年50才は若いけれど、随分長く生きた印象もあるという夕刊のコラムを読んで、なるほどと思いました。
 
 少年のままでいたかった、いればよかったマイケルが、大人になってしまった、それも逃げ隠れできない、すこぶる有名な大人になって、結婚もし、子どもも作ってしまった。その前に、せめて青年時代に夭折すべきだったのかもしれません。「ネバーランド」に拘った彼の心情が気の毒です。
 
 授業に遅刻してきて、マイケルの死を教えてくれた生徒が「センセー、マイケルって昔、黒人やったんやろ?」
 
 思わず苦笑してしまいました。無意識に本質を衝いて、怖い。
 
 昨夕は最初に赴任した高校の卒業生、あるクラスの34年ぶりの、そして初めての同窓会。最初に教えた生徒達で、当時、私は22才、生徒は17才、年齢も近く、今から思えば師弟というより兄弟のような関係でした。担任ではありませんでしたが、当時の担任の先生とも親しかったので、声を掛けてくれたのです。
 
 難波のホテルに集まったのは卒業生39名中、13人のおっさん達。彼らの高校当時は工業高校の最後の華やぎがあった時でしょうか。それから高度成長に反比例して、工業高校の厳しい時代が始まります。私が彼らの3年後に送り出したクラスは退学者が続き、29名でした。
 
 出席者は皆52、3才ですが、電気科だったので電気屋さんももちろんいるけれど、企業に入った者、公務員(府警の警視や中学校校長もいます)、海外経験のある者も多し。驚いたのは皆結婚(離婚再婚はひとり)していて、子どもを持ち、すでに子どもが結婚している者も3人いたこと。さすがに孫持ちはまだいてませんでしたが。
 
 感動的だったのは30年の時間をあっという間に超えたこと。そして、旧交を暖めながら、当時の誤解や行き違いが解きほぐされ、解消されてゆく。個々のスピーチにも胸打たれました。
 
 女性ばかりの家に養子に入り、苦労しました、でも、明日が僕の新築した家の披露です。
 
 母ひとり子ひとりで成長した生徒が・・・家族を持ち、みんなで母親を先日見送りました、明日が49日の法要です。
 
 埼玉から駆けつけました、今夜9時50分で夜行バスで、明日の朝の趣味のバレーの試合に間に合うように帰ります・・・。
 
 みんな一生懸命生きている。そして生きてここに集まれた幸運に感謝している。
 
 当時の勤務校の教師の平均年齢も30そこそこでした。このクラスの担任で私を弟のように可愛がってくださったI先生が、60代でウエストも引き締まってお元気なのに感服。毎日走ってはるらしい。いい目標ができました。
 
 横浜からセッティングしてくれた幹事のS君が急病で欠席だったのが残念、S君ありがとう、代役のO君ががんばって仕切ってくれました。いい同窓会でしたよ。またよろしくね。
 
 それにしても、不参加の26名のことを思います。あの顔、この顔・・・みんなどうしているだろう。
 
 私は今までほとんど後ろを見ないで生きてきました。この同窓会を機会に、幹事から古い写真の提供を頼まれ、この数週間、深夜にぼちぼちダンボールに放り込んでいた30年余りの膨大な写真を整理してきました。
 
 それは非常に新鮮な体験でした。自分の来し方をゆっくり振り返るなんて・・・。
 
 そして思いました。大事なことは、感傷的に過去の出来事や思い出に浸ることではなく、その中で得たものを確認して、それを明日からの生活に活かすことなんだ。振り返ったら、それに嵌り込んでしまう、そんな危惧がありました。でも、昨日は昨日、失敗は反省、それに引きずられず、いい思い出だけを糧に、自信を持って生きればいいのだ、と思うと楽になれました。
 
 そんな思いに至ったのは、やはり年のせいかもしれませんが(苦笑)。
 
 早速、自選ベストショットを選んで、部屋に飾り始めた、お調子モンの私です。
 
 トニー賞、演劇部門、助演女優賞は、84才のアンジェラ・ランズベリー(テレビの「ジェシカ叔母さんの事件簿」で有名。映画「ポセイドン・アドベンチャー」も名演技でした)。これで受賞は5度目?そのあくなき向上心に感嘆。
 
2009年6月26日
 
「 チェ・ゲバラの プリントされたるTシャツを 少女は纏う 誰とも知らず 」 新聞歌壇より 新潟 高橋さん
 
 朝の「めざましテレビ」。ファラ・フォーセット(このあとメジャーズが付いていましたが、夫であった俳優リー・メジャーズと離婚してメジャーズの表記は消えました)死去の報。末期癌で長年の恋人、ライアン・オニールと結婚するというニュースを聞いたばかりだったので、驚き。でも、結婚前のいちばんいい時期に亡くなったんだと納得。テレビ版「チャーリーズ・エンジェル」は楽しみました。明るく、華やかでセクシー。爆発的人気を得て、映画にも進出、「サンバーン」などに主演しましたが、なぜかスクリーンでは精彩を欠きました。でも、ライアン・オニール、どうせなら20年前に結婚すればよかったのに・・・これはお節介です。
 
 6時半、マイケル・ジャクソン、病院に搬送されるというニュースを聞いて出勤。1時間目の授業中、遅刻してきた生徒が、センセー、マイケル・ジャクソン死んだの知ってる?と言ったので、思わず絶句。
 
 授業を中断、マイケルについてちょっと講釈。知らない生徒のために、ムーンウォークまがい?も披露。笑いとまばらな拍手。
 
 ジュクソン・ファイブのデビューから見てきているのです。少年時代から抜群の歌唱力とダンス。もう超一流のプロでした。それゆえのプレッシャーと苦悩があったのでしょう。
 
 数々の伝説とスキャンダル。その中には、少年への性的虐待疑惑や莫大な借金などダークな部分もありましたが、あの清冽な「ベン」の歌唱(聴く度に涙が出ます)、「ウィ・アー・ザ・ワールド」などの難民救済活動もこころに残っています。
 
 マドンナ、エリザベス・テーラー、スティービー・ワンダーなどの友人のコメントが続く中、彼が憧れ、愛し、報われなかった運命の女性、ダイアナ・ロスが沈黙を守っているようです。
 
 最近読んだ本
 
「 ポトスライムの舟 」  津村 記久子
 
 平成20年度下半期、芥川賞受賞作。
 
 大学を卒業して就職した会社をモラルハラスメントが原因で退社した主人公、(限りなく寄り添いつつ「長瀬」と客観的に表現)が3つの仕事を掛け持ちしつつ、海外旅行の夢を追いつつ、友人たちの面倒をみつつ、ワーキングプアーとして生きる姿を、無駄なく見事に描く。
 
 題名は主人公が育てる観葉植物。食費を節約するため、これを食べられないかと真剣に悩む。そして、疲労で高熱に浮かされて、小舟に乗ってこれを南洋の島々に配って廻る夢を見るのです。
 
 暗いはずなのに、妙に突き抜けた明るさがある。母親、離婚した友人とその娘の少女らがきちんと描かれているところ、また東京でなく、関西が舞台で、奈良、大阪という風土もうまく生かされ、生きることの切なさ、必死に生きる人々への愛おしさが重々しくなく伝わってきます。
 
 選者評の村上龍さんの「狂気や妄想などコントロールできないものを描こうという意志を持つべきではないか、この作者はコントロ−ルできるものしか描いていない」という趣旨の意見には頷くところがあります。
 
 石原愼太郎さんの「他の作品のあまりの酷さに、相対的に繰り上げての当選ということにした」はちょっと酷い言い方ではないでしょうか(苦笑)。
 

2009年6月21日
 
 「父の日を ベンチに眠る 漢(おとこ)かな 」  中村 苑子
 
 日経新聞のコラム「春秋」氏はこの句を採り上げ、「彼は幸せなのだろうか」と文を結んでいますが、それは誰にもわかりません。
 
 いつもなにやら寂しく感じる夏至の日(反対に冬至の日は嬉しい)。これから日が短くなると思うと切ない。気が早いけれど、寒くなるのはイヤなのです。実際にはこれから暑くなるのですが・・・。今日もじめじめと蒸し暑い一日でした。
 
 新聞最終面の下半分に、伊勢丹新宿メンズ館の広告。「感謝の16章」。父の思い出を16のエピソードで繋ぎ、最後に「父にかざす一本」のコピー。前原光榮商店の紳士傘。21,000円。16の骨。「傘」という字の4つの「人」は、生地、傘骨、加工、手元の四人の匠たちなのだそうですが・・・。
 
 洒落た新聞広告でした。
 
 義父の代わりに義母を誘って昼食はイタリアン。河南町のサントル・ドゥ・ビラージュは表まで人が並ぶ人気。若手パティシエが今年の職博でまた賞を貰ったこともあるかもしれません。予約して置いてよかった。
 
 葡萄畑のあちこちでデラウエアの直売店が臨時オ−プン。いつも開いている馴染みの店が押されています。苦肉の策で、たこ焼きなんかを始めているとこもあるけれど、基本的に通りが農道だから、売れ行きはイマイチみたいです。
 
 四国の父には夕方電話のみ。もう飲んで寝ているみたいでした。田植えが終わってほっとしているのでしょう。でも、当分、水の具合をみるのが大変です。プレゼントは夏休みに。
 
 昨日の土曜に、先月の引っ越し以来はじめて上の息子が帰ってきました。忘れ物を取りに来たのかと思ったら、買い物に出て、父の日のプレゼントと言って、プレミアムビールを一箱置いてゆきました。下の息子と折半なのだそうです。
 
 というわけで、ひさびさ発泡酒でない、本当においしいビールをいただいております。(発泡酒も第3のビールもおいしいけれど・・・笑)。

2009年6月20日
 
 「ひさびさに 会う青大将 元気元気」 新聞俳壇より 別府市 河野さん
 
 蛇って強そうですが、近眼で、しかも鼻も効かないのですね。以前、道をぴょんぴよん横切って逃げる蛙、後をするする追いかける青大将。あわやというところで、蛙は道を横断しきって草むらへ飛び込む。その瞬間、蛇は後を追って飛び込むと思いきや、相手を見失って、当惑しつつすごすご去ってゆきました。
 
 懇談と家庭訪問のハードな一週間でした。特殊な事情がある(3年目で卒業の見込みのない生徒を集めている)わがクラス故、学校に来ない、来れない生徒が半分以上います。もちろん電話も繋がらない。予約なしに訪問するので、相手も戸惑う。
 
 大概、玄関かアパートの通路で、声を潜めて立ち話ということが多いけれど、金曜日、4軒目に訪れた家で初めて招じ入れられる。もちろんお茶は出ないけれど(期待もしていない)、訪問を感謝されてほっとしました。
 
 どうにもできないで、時間が過ぎ、授業料だけかさんでゆくという現状打破の一端になればいいのですが・・・。
 
 うれしい土曜の朝、5時前に起きるともう朝日が昇っている。明日は夏至なのですね。強い風が吹いて、ベランダのラベンダーが吹き倒されてしまいました。山椒は元気。葉をむしって、水で洗い、両手でパンパンと打つ。さらにいい香りが拡がる。冷や奴の上に載っけて、ビール、マチガイ、発泡酒のアテに。これ、最高。
 
最近読んだ作品
 
「 呪われた研究室 」 奥泉 光 
 
 「桑潟幸一準教授のスタイリッシュな事件簿」という皮肉な副題がついている、このシリーズも人気を呼んでいるみたい。とにかく「ハマコー」がそのエエカゲンさから、いつも事件に巻き込まれて、かつ混乱させてしまう。
 
 10年間、大阪府、東大阪市は生駒山の麓にある「敷島学園麗花女子短大」(通称レータン)から、短大倒産前に無事?脱出、千葉県の権田市にある「たらちね国際大学」に勤務しはじめるがもちろん波乱含み。研究室には変死事件の噂が。そして次々起こる怪事件。「たれちね文芸部」のユニークの生徒達も登場、ぐちゃぐちゃの様相を呈しながら、探偵もいないのに、なんとか事件は納得のゆく解決に向かってよろよろなだれ込んでゆく・・・。
 
 内面のない上っ面ばかりの世の中を笑い飛ばす、ナンセンスでブラックな笑いのパワーを持っています。
 
 奥泉さんの力量、かなりのものかも知れません。

2009年6月17日
 
 「一束の 菖蒲(しょうぶ)があれば それでよし」 九鬼 あきら
 
 雨が結構好きなのですが、梅雨なのに、雨が降りません(苦笑)。この菖蒲は、たっぷり水を張ったバケツに入れてあるのでしょうね。涼しげです。
 
 午後7時半から懇談。父子家庭で、父親の仕事の関係でこの時間帯しか来れないという。不況で仕事を休むこともできない。家事は?高校へ行っていない弟が主夫をしているそうです。うちの生徒は明日で18才。20までには卒業しいや、とハッパをかける。
 
 最近読んだ作品  
 
「龍涙ードラゴン・ティアーズ」  石田 衣良
 
 「池袋ウエストゲートパーク」の最新作は池袋チャイナタウンが舞台。中国人研修生の厳しい生活。茨城の工場から失踪した研修生の少女の行方探しに、中国人組織と日本のヤクザのなわばり争いも絡んで、複雑な展開を見せる。
 
 暗くなりがちな話ですが、主人公「マコト」とパワフルなそのおふくろのキャラ、中国人組織のキレるイケメン「リン」の存在感が生きて、後味の善い仕上がりになっています。
 
 研修生という聞こえの善い名前で低賃金で働かせ、いいとこどりするより、この話のように「養子縁組をしてまるごと受け入れる」というのも、ひとつの在り方です。
 
20009年6月16日
 
 今週のホームレス 公田さんの投稿歌(毎週ほとんど入選するのがすごい)
 
「 辞書持たぬ 歌作りゆえ あやふやな語句は 有隣堂で調べる 」
 
 これでまた、公田さん探しが 始まるんじゃないかと心配。有隣堂のある近くに住んではるんですね。でも、チェーン店でいっぱいあるのでしょうか。
 
 昨夜10時まで会議をやって、今朝は7時半過ぎから6人の申し渡し(停学、訓告など)。生活指導の一員として交通整理。何度も注意しているのに、校門の中まで母子で自転車に二人乗りしてやってくる。母親は、こちらがおはようございます、とあいさつしてもご機嫌斜め、見向きもしない。こんな親の子がまともに育つとは思えない。
 
 懇談週間で短縮授業。午後からひとり懇談を済ませて、連絡がとれなくなっている生徒宅へ家庭訪問。先週から3軒目。強い日射しの中、矢田住道の商店街を歩く。汗が噴き出す。猫がのんびり歩き、小さな個性的な店がある。「椅子の病院」(家具の修繕屋)なんていいなあ。でも、下町の風情があっていいところ。今度ゆっくり来てみたい。
 
 やっと探し当てたアパートの一室は表札も部屋番号もなし。期待しないで、ノックしたら、いてはった!ラッキー。初めて顔を会わす生徒。自己紹介から始まる。もう一年以上学校へ来ていない。バイトもしないでぶらぶらしてるらしい。学校へ行く気はないというので、たまたまおられたおかあさんとも話をして、退学の方向で話をまとめる。
 
 これからどうやって生きてゆくのか。せめて積極的にバイトでも探さなくては。働かんとあかんで。
 
 もう、会うこともないだろう人々。これも一期一会。でも会えて、笑顔で別れることが出来てよかった。
 
最近読んだ作品
 
「お燈まつり」 山本 一力
 
 文化4年(1807年) 江戸から新宮に移ってきた光太朗は腕のいい傘職人。江戸の両国橋落下事故で恋人を失い、心機一転を図ってここまでやってきたのだ。江戸のからの人間というので警戒して迎える職人仲間、風呂をはじめ江戸とは違う風習に光太朗は戸惑う。
 
 亡くした恋人に似た面影の「かすみ」との出会い。恋のさや当て、その中で祭りを通じて次第にこの地に、仲間達に馴染んでゆく。
 
 山本さんの作品にしては後味よし。
 
 商家が客に傘を貸し出す為、番号をつける、だから「番傘」というのだと、初めて知りました。
 

2009年6月14日
 
 「 子どもの頃 わたしは夏の 川だった 」 新聞俳壇から  秩父市 浅賀さん
 
 早苗を植えたばかりの水田、男の子がふたりはいって遊んでいる。兄弟らしい。これこれ荒らしたらアカン、と注意しようとしたけれど、おまりに楽しそうだから、しばらく見ていました。ざりがにを獲っているらしい。
 
 弟が、おにいちゃん、蛇!と言って逃げてくる、ふたりとも慌てて畔に上がる。で、改めて、興味津々の様子で、兄を先頭に蛇を見に、また、こわごわぬかるむ田んぼに足を踏み入れる。ふたりともどろんこ。帰ったらお母さんにおこられるやろうなあ。
 
 思わず笑ってしまいました。男の子やなあ。あれは50年前の我々兄弟。20数年前の息子達ふたりのようです。なぜか夏の日射しの下では少年が似合う。男の孫がほしいなあ、と思わず呟きました。でも、まだその前段階の気配もありません(苦笑)。
 
 金曜未明の富田林、石川河畔での高一殺人事件。見たくないけれど、情報が欲しくて、つい深夜まで2チャンネルをチェックしてしまう。1000件を越す書き込み、読んで後悔しました。匿名性の怖さ、悪意、偏見に満ちた誹謗、中傷、妄想・・・気分が滅入ってしまいます。でも、それらの情報錯綜の中に、事実が少しずつ透けて見えてくることもある。
 
 それにしても、深い事情があったにせよ、残忍な計画的犯行に違いはありません。しかも、犯行後、登校、授業を受けていたのですね。事件の渦中の女生徒も心配です。家族、友人、教師の困惑・悲嘆はいかばかりか・・・。
 
 14日はクラブ公式戦の会場校になったので、その付き添いと試合進行の為出勤。好天下、爽やかに見える選手達のきびきびした動きを目で追いながら、プレーを楽しみつつ、思いは複雑でした。容疑者の高3の生徒も、バレー部のセッターで活躍していたと聞きました。
 
 いろんな人、いろんな生徒がいることはわかっているけれど。
 
 人の世の喧噪をよそに、今日もおだやかな美しい落日。いろんな思いで眺めた人がいることでしょう。
 
最近読んだ作品
 
「俺だよ、俺。」  荻原 浩
 
 とうとうというか、やっと出ました。振り込め詐欺の犯人側に視点をあてた小説。
 
 目的もないまま東京の大学に進学し、ちょっとした好奇心から演劇に足を踏み入れた「俺」は、やがて、元劇団仲間に誘われて、振り込め詐欺一味に加担するようになってゆく。
 
 場所は仲間の借りた狭い4畳半。5人で組になって、事故を起こした本人、警察官、弁護士などの役割を振って、すばやく電話の会話を繋いでゆく。
 
 高額で手に入れた個人情報を元に、智恵と演技力の限りを尽くすが、土壇場の呼称(「おかあさん」と言ってしまうー該当者は「ママ」と呼んでいたのだーそんなことはわからない)で失敗したりする。
 
 成果が上がらないのに焦った一味が、タブーとされる大阪地区に手を付けたことから、仕事は一気につまずいてゆく。チームの瓦解、法の手が迫って来たことを感じて、「俺」は隠していた出身地、大阪の「おかん」に電話する。ボロクソに怒られる。
 
 「俺や」
 「 俺って誰や、名前、言えんのと違う?オレオレ詐欺やろ?」
 「慎二」
 「慎二?騙されへんからね、ほんまの慎二ならうちで飼うてたワニの名前言うてみぃ」
 
 主人公の名前が初めてわかる終幕。ワニなんか飼うたことないやん?やっぱ、変わらへんわ、普通、犬やろ?というツッコミで終わるのが,妙に明るく、救いのある結末です。彼には故郷にたくましいオカンがいる。東京弁と大阪弁、「俺だよ」と「俺や」が呼応する。荻原さん、ウマイ!
 

2009年6月13日
 
 「どうしたの」 ふいにやさしく言われたら ほどけてしまう 表面張力   朝日歌壇より  新潟市 太田さん
 
 みんな、気を張って、精一杯、しんどい時代を生きているのでしょう。声の掛け方も難しい。がんばって、と言うのも難しい。でも、やさしいひと言に救われることは今も、あちこちにあるはずです。
 
 先日引退しはった草刈民代さまの特集番組をビデオで見る。バレエにのめり込んだ草刈さんは中学もほとんど行かず、結局高校もひと月で退学する・・・。
 
 それで思いだした話。歌舞伎の中村橋の助さんは高校2年で、歌舞伎に打ち込もうと退学を決意する。父親の中村 芝翫(名女形、人間国宝)がためらう中、叔父の中村歌右衛門が両手を挙げて大喜びで賛成する。
 
 自分の道を見つけたらまっすぐ行けばいい。高校、大学を卒業してからという考えもまっとうでしょう。でも短い人生、やりたいことがあるなら、それに邁進すればいいと思うのです。あ、これって高校教師がいう言葉じゃないって・・・(苦笑)。
 
 12日夜は、また昨日とは別の、最近連絡が取れなくなった生徒宅を訪問。5月に電話が不通になった(それはどこでもよくあること)のですが、先日、手紙も返ってきたのです。H区内の通りからひと筋入ったアパートの2階。不動産屋の貼り紙が風に揺れて、明らかにこちらは空室。弟さんを含む家族4人はどこへ。溜まっている授業料のこともあるけれど、ややこしい問題に巻き込まれているのじゃないかと心配。空しく帰って来ました。また対策を考えます。
 
 12日もそうだったようですが、13日も朝からヘリコプターが空に舞って、南河内は何か騒然とした感じ。あの事件(高一生徒殺人事件)があったからです。現場は家の南のベランダからはるかに望める石川の河畔。容疑者(高校3年生)が逮捕されたと聞きますが、まだ詳細があきらかでないので論評は控えます。この梅雨空の如く、重く曇った心境の一日でした。
 
来る人
 
澤村 籐十郎さん  歌舞伎女形 現在64才
 
 近代的センスも持ち合わせた美しい女形でしたし、金比羅歌舞伎の仕掛け人でもありましたが、10年前に脳内出血で倒れました。ファンだったので、ずっと心配していましたが、今年の夏から朗読で復帰。ラジオのパーソナリティ、舞踊の指導・演出、そして歌舞伎の舞台への復帰に情熱を燃やす。
 
 絶頂期のはずだったこの10年が惜しまれますが、本人は「いい充電期間だった」と意気軒昂。すごいなあ。
 

2009年6月11日
 
朝日歌壇のホームレス歌人 公田 耕一さんの投稿句
 
 「 リサイクル文庫に ひっそり黄ばみたる 『清唱千首』恋の部を読む 」
 
同じ歌壇の常連、郷さんの望郷歌に共鳴した 鹿児島市 山本さんの歌
 
「 郷さんは 矢張り薩摩の人なりし 『きばんせいや』と メール送らん 」
 
きばんせいや は、がんばってください の意味でしょう。
 
 今夜も 隣町の生徒宅を家庭訪問。もう、電話も繋がりません。
 
 夕暮れの中、やっと探し当てた家は、玄関前に荷物が山積。誰かが書いた「電話せよ」の大きなメモが貼り付けてある。
 両親はいなくなり、妹は施設に。本人はひとり家に残っていたはず。でも、生活の気配がない・・・。まだ、籍があるので、授業料だけ積み重なってゆきます。どうしているんだろう。手紙を、溜まった郵便受けのメールの上に置いて、一応帰って来ました。心配です。
 
 前にも書きましたが、うちは貧しいけれど、頂き物だけは多い家です。ざっと周囲を見渡すと・・・「石切さん」の「ピーナツ揚げ」、これダイスキ。「たね也」の「よもぎ餅」、これもおいしい!昆布、梅、鰹節をからめた「おやじ泣かせ」これも酒のアテにぴったし。すべて、嫁ハンのシャンソン教室の生徒さんが持ち寄ってきたもの。大阪のおばさまの食に対する意欲や恐るべし(笑)。
 
 極めつけはやはり、山形の友人からの桜桃「佐藤錦」。これを頂くと、初夏だなあと思います。今年も生きていてよかったと思います、まさに果物の宝石!Nさん、ありがとう!!
 
 テレビでサンマリノ共和国を特集している。イタリア山岳部の陵に立つ、人口3万の小国。この国は執政官2名が半年交代で統治している。それも何百年も。今の執政はガス会社の社員と公務員、それぞれ半年休職してこの仕事に就く。
 
 これって、おもしろい。ひとりでなく二人。任期も短いし、独裁はあり得ない。第2次世界大戦中も中立を貫き、周囲から30万の難民を受け入れて、国民と同じ食料を配布し、終戦まで耐えた。筋金入りの共和国です。
 
 どこかの国の世襲制の社会主義国の国家元首に教えてやりたい。
 
最近知った言葉
 
 「外接ロハ」 
 
 4月24日に観測された太陽の周囲に出来る楕円形の虹色の輪。輪の中には更に円形の「内暈(ウチカサ)」が見られたとか、これを見た人にはきっと幸運が訪れたと思いたい。
 
最近読んだ作品
 
「渋うちわ」  乃南 アサ
 
 渋谷でパチンコに負けてしょぼくれて店を出た若者に、中年の女性が声を掛ける。内容は400万での夫殺しの共犯依頼だった。
 
 そんな話に乗るか?でも、乗りそうな軽い男。結局その男の中途半端な行動(死体を始末しきれなかった)で犯行は足を出す。女性が逮捕され、男はそのまま行方不明。いかにもありそうな結末で余韻を残します。

2009年6月7日
 
「 出る月を待つべし 散る花を追うことなかれ 」 中根東里
 
 江戸時代の清貧の学者。学識を高く評価されながら、宮仕えをせず、長屋で履き物を作って売りながら学問に励んだ。52才(当時としては老人)の時、まだ独り身で栃木で村塾を開いていたら、弟が来て、難産で妻が死に、育てられないと3才の幼女を置いて去っていった。その時、幼女を抱いて作った句と言われています。
 
 後ろを見ない、希望を持って、今を生きるのだ。
 
 中間考査で忙しい中、恒例になっている職員バザーを4日間、開催しました。現任校で11回目。
 
 しんどい時ほど、より厳しい状況の人々の事を思うものです。昨年の大地震からなかなか復興できないらしい中国四川省の人々、ソマリア、スーダン、スリランカなどの難民の人々・・・。今の日本の、また自分の置かれている状況がどんなに幸せなことか(しかもそういう国々で苦しんでいる方々を踏み台にして今の日本の繁栄と平和もある)・・・それを思うと、うしろめたい、申し訳ないという気持ちがこみ上げてきます。
 
  それを誤魔化す?といってはなんですが、自己満足のために、毎月二千円の募金と、年2回の職員バザーの収益を送ってきました。元々は姪(姉の娘)が中国で留学生生活のかたわら活動していたことの遺志を継いだものです。

今まで支援していた四川省・楽山の小学校(10年前に姪が命を落とした地、昨年の地震の被害が心配)と依然連絡がとれていないので、昨年末の第10回から、チャリティーマラソン(毎夏、現任校職員有志と生徒が淡路島でリレーマラソンをしつつ募金活動、収益金をネパールの小学校建設基金としている)と世界の難民支援としてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に寄付しています。

呼びかけに応えて、同僚からたくさん提供品をいただく。古いパソコン、イタリア製の古いカバン、セーター、バスタオルセット、CD、本、ワイン・・・。

 義母(ダイエット中)の、買ったけれど着なかったブラウス、嫁ハンのコート、息子の残していった文房具などを31日、日曜の朝、車で搬入。荷物を運んだ帰り、昼食に「かつ喜」で夫婦でバラエティセット(カツがいろいろ、ごはん、味噌汁、キャベツはお代わりし放題―二人分2800円)をいただく。もう、おなかいっぱい、幸せ、難民キャンプの子供たちに申し訳ないわ、と言いつつ、ひとりで、わらびもち、ソフトクリームをデザートに注文したのは嫁ハンです(「別腹」とはこのことだったのですね、改めて驚き呆れましたー苦笑)。

わたしは衣類と、昨年のクリスマス、藤井寺のスナックの女の子からもらったニットの帽子(ちょっと頭にきつかったので)を持参しました。陳列してると、ちょうど靴や小物を持ってきてくれた若い同僚(女性)が「センセ、これ首に巻くんですよ」と教えてくれる。そうだったのか、と慌てて回収。ゆかちゃん、ごめんね。この冬、嫁ハンに内緒で愛用します(笑)。

 折しも、6月2日、UNHCRの事務局長、根本かおるさんから封書が届きました(毎月届きますが、今回は臨時便)。アフリカ、ケニア・ダダーブキャンプの緊急事態についての報告と支援要請です。

隣国ソマリアの内戦からの難民が、受け入れ能力9万人のキャンプに26万人以上なだれ込んで来ている。40度を越す気温に水不足、襲ってくる竜巻、毎日千人を越す難民が押し寄せ、対応するスタッフは23人・・・。幼児、老人から次々亡くなっていっている・・・。

水を運ぶ容器が200円弱、1,5000円で一家族用のテント一張が手に入ります。

バザーが終わった翌5日、収益金27,450円を振り込む。(振り込め詐欺では、と不安になって、もういちどインターネットで確認しましたー苦笑)。

とにかく忙しい中、毎日2時間のバザー開催は大変でした。物品提供、陳列、値付け、店番、会計、撤収・・・支えて応援してくれた同僚に深く感謝。ほんまに人間関係のええ職場なのです。

タイイミングよく?国連UNHCR(難民高等弁務官)の活動に従事するスタッフを主人公にしたNHK土曜ドラマ「風に舞い上がるビニールシート」が話題になっています。数年前に直木賞を受賞した原作(森絵都さん)を読んだのですが、メロドラマに流れた感じでイマイチだった印象があります。折角の機会です、テーマのひとつである支援活動も映像できっちり描いてほしい。

最近読んだ本

「告白」  湊 かなえ

週間文春の08ミステリーベスト10の1位に選ばれ、半年ですでに17刷を超える話題のベストセラー。事情があって(!)購入しました。本屋(もうすぐ無くなる古市駅前の店)のレジの横に平積みになっていました。

おもしろい!ミステリーですから内容はあかせませんが、地方の公立中学、3学期の終業式のHRで年度末に辞職する担任が、別れの挨拶、一転衝撃の「告白」を始める・・・。幼児殺害、キレる生徒、モンスターペアレント、夜回り先生、HIV感染、ひきこもり・・・5人の告白が語り継ぐ凄惨な事件と人間の暗部。

それにしてもこれがデビュー作とは思えない。構成、表記も巧みです。でも、後味は悪いですよー(笑)。それがこの作品の狙いなのですが・・。

「弔辞屋」 森村誠一

大手企業を無事勤め上げ、退職した二宮は幸運だった人生に感謝しつつ、退職後の時間を持てあまし始める。そして妻と離婚、昔の憧れだった女性を訪ねると、彼女も二宮を思いつつすでに亡くなっていたことを知る。地方の有名人だった彼女の弔辞を読まされたことから、彼は一躍有名人に・・・。

ちょっとご都合主義の展開ですが、定年後の在り方を追求したのでしょう。森村さんの文章は今回、妙に硬くて読みづらい。

羽曳野情報―駒ヶ谷は葡萄の名産地。いよいよシーズン突入。デラウエアが一番手で、これから更に甘くなるそうです。南河内の奈良県との境の斜面を南北に走るグリーンロードはドライブに最適。その途中に拡がる葡萄農園に直売所が何箇所もオープンしています。農産物も売ってはって、毎週チェックするのが楽しみ。お奨めです。


2009年6月6日
 
「 われよりも 素直に生きる弟と 歩みの遅き 象を見ている 」  新聞歌壇から  東京都 岩崎さん

ビデオでガマン

「長江哀歌(エレジー)」

原題: 三峽好人/STILL LIFE    製作年度: 2006年

解説: 長江の三峡ダム建設のため、水没する運命の古都・奉節を舞台にした人間讃歌。『世界』などのジャ・ジャンクー監督がタバコ、草、酒、茶、飴という市民の生活に根ざした嗜好品を題材に、美しくせつない物語を紡ぎ出す。『プラットホーム』のハン・サンミンが等身大の中年男を好演し、現地で起用された素人俳優たちと素晴らしいアンサンブルをみせる。本作は力強く生きる人々の現実と景勝地の最後のきらめきをとらえ、2006年ベネチア国際映画祭でグランプリを獲得した。(シネマトゥデイ)

あらすじ: サンミン(ハン・サンミン)は、16年前に別れた妻(マー・リーチェン)と娘を捜しに山西省から長江流域の都市、奉節にやって来る。昔の住所を頼りに妻の実家を訪ねたものの、そこはすでにダム建設のため水の底に沈んでいた。役所に問い合わせてもらちがあかず、結局、彼は安宿に腰を落ち着けて2人の行方を捜すことにする。 (シネマトゥデイ)

 ストーリーは、サンミンと平行して、同じく長年連絡が取れない出稼ぎの夫を探しに来た女性の姿も描かれます。二組の男女は巡り合えるが、それぞれ、違いすぎた今の生活を捨てられず、サンミンは山西省に帰り、女性は上海へ向い、古都・奉節は水没してゆく・・・。
 自由経済へ移行する過程で浸透してゆく個人主義、さらに拡がる格差社会。ただでさえまとめがたい多民族国家を、もうイデオロギーではかく、北京五輪や上海万博のような大イベント、この三峡ダムのような巨大プロジェクトで引っ張ってゆくしかない。でも、どこへ?
 
 環境破壊をしてきた日本人がえらそうに言えることではありませんが、たくさんの人の故郷を奪い、歴史を水没させて、発展?してゆく先には何があるのか。山西省に帰るサンミンを待っているのは、違法炭坑での危険な採掘の仕事です。
  「烟(タバコ)」「酒」「茶」「糖(アメ)」というタイトルが付けられたエピソードの積み重ねと、一貫して登場する「札」。今後の中国での人と人の繋がりは、個人的なものでなく一般的経済に拠ってゆくという暗喩・皮肉なのでしょうか。
 人と組織(国家)、歴史と未来、重いテーマを、雨の多いくすんだ画面、低いアングルで丁寧に描いています。確かにいい映画なのですが、見た後は重い。中国はどうなってゆくのでしょう・・・。



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